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第84話

「真。あいつが何を言ってきたって気にするな。唯希は法律上も正式に俺達の子供なんだ。もう二度とあいつが勝手に訪ねてきたりできないようにちゃんと対策を講じるよ」  樹にきっぱりと宣言され、俺はようやく肩の力が抜けた。 「他にはあいつ何か言っていなかったか?」 「別に……何も」  口ごもる俺の様子がおかしいことに樹も気付いたのだろう。 「真、全部きちんと話してくれなきゃ、対策だってたてられない」  そう言われても、蔵元が話した内容を樹に聞かせるのは気が引けた。  樹が大きなため息をつく。 「唯希のためなんだ。全部話してくれ」  そう言われると俺も黙っていることはできなかった。 「蔵元は樹が本当は唯希のことを可愛いとなんか思っていないって。冬と三人の方が俺達は上手くいくって」 「ずいぶん勝手なことをいいやがる」  樹が吐き捨てるように言った。 「俺も気を付けるが、真も子供たちにいつも以上に気を配ってくれ。追いつめられた人間は何をするか分からないからな」  「うん」  素直に頷く俺に樹が苦笑した。 「さっきだってスマホ持ってたんだろ?これからああいう時はちゃんと連絡しろ。唯希から話を聞いて俺がどれだけ心配したか。あの土砂降りの中、傘もささずに飛び出したんだぜ」 「うん。本当にごめん。まさか蔵元が突然訪ねて来るなんて想像もしていなかったから俺も気が動転しちゃって。樹に迷惑かけたくなかったし、連絡しないほうがいいかなって」 「迷惑だって?」  樹の声が急に低くなる。  腕を掴まれ、力の強さに思わず顔を顰めた。 「樹?」 「俺はお前や唯希や冬からどんな面倒をかけられたって迷惑なんて思わないさ。家族なんだからな。なのにお前は何か起こるといつも俺に対して、申し訳なさそうな顔をする。どうしてなんだ?」

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