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昏い欲望3

 冬はかさついた唯希の唇を慰撫するよう、何度もそこを己の舌で舐め、口づけた。  併せて下半身も服の上からまさぐったが、唯希は何の反応も示さなかった。  冬はちらりと玄関に目をやる。  父は当分帰りそうもない。  冬は唯希のズボンに手をかけると、下着と一緒に降ろした。  くたりとした唯希の屹立が目に入る。  冬はごくりと唾を飲むと、唯希の下半身に顔を伏せた。  匂いを嗅ぎ、先端を舐めしゃぶる。  唯希のそこは青い草原の香りがした。 「ううん」  流石に違和感を覚えたのか唯希が唸る。  冬は慌てて顔を上げると、元通り下着とズボンを唯希に履かせた。  その時、玄関の方から物音が聞こえた。  冬が立ち上がるのと、樹がリビングに入ってくるのはほぼ同時だった。 「ただいま」 「おかえり。早かったね」 「ああ、意外と仕事が早く片付いてな。唯希は?」 「疲れたみたいで寝ちゃってる」  冬が視線でソファを示すと樹が苦笑した。 「唯希は今仕事が繁忙期なんだろうな。冬、唯希が風邪をひかないように毛布をかけといてやってくれ」 「はあい」  冬はにこりと微笑むと、頷いた。  まさかあれを見られていたなんて。  冬の背筋を冷たい汗が伝う。 「一体何を考えてるんだ。唯希はお前の実の兄なんだぞ」 「でも血のつながりは半分だけだ」  今度は樹が驚く番だった。  唯希の出生の秘密は冬には告げていなかった。  まさか唯希が冬に話したのだろうか。  樹は内心の動揺を悟られないように、目の前の冬に冷たい視線をむけた。  冬が肩を竦める。 「兄さんを好きになったのは悪いと思っているよ。でもダメなんだ。自分の気持ちを抑えられない。兄さんだって俺のことを可愛がってくれているじゃないか。俺達は両想いなんだよ。応援しろとは言わないけれど、留学なんて行くつもりはないから」  冬の言葉に樹が表情を歪ませる。 「両想いだって?妄想も大概にしろ。いいか?唯希や真の不幸の上に成り立つお前の恋心なんて、俺は絶対に認めないからな」  樹は冬を机の方に引きづっていくと、その手に無理やりパンフレットを握らせた。 「留学しろ。これは命令だ」  冬は突然表情を無くすと、父を見上げた。 「分かった。言う通りにするよ。今はね」  そう言うと冬は、手の中にあったパンフレット全てを宙に放り投げた。  その時冬の口元には、はっきりと分かるほどの笑みが浮かんでいた。                                  To be cotinued?

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