「そういや、もう許可は必要なくなったんだったな」 「ぁ……」 　額にくちづけを落とされて、とろりと身体にスイッチが入る。 「こま、困り、ます……」 「きみはエッチなことが好きだ」 　揶揄するように、テラに言われ、抱き寄せた指で耳朶に触れられると、変な声が出そうになってしまう。 「そんな。それを言うなら、テラだって」 　赤面して、一生懸命に言い返すハナに、テラは肩をすくめて笑った。 「認めよう。まだ、告白したてだった頃、きみがわたしを意識して、どう明が引いた線を踏み越えようか悶々と迷っているさまは、見ていて本当に心踊らされるものだった」 「えっ」 「きみが悩ましげに欲望を抑えるさまは、正直、楽しくて仕方なかったよ」 「そ、それ、初耳ですけど……っ」 　もしやそんな風に思われていたのかと思うと、ハナはムッとして、テラに握られている手にぎゅっと力を込めた。が、ハナの威力など子どものもののように、テラは簡単に解いてしまう。 「きみが、こうして拗ねる顔を見られるのは、特権だな」 「し、知ってたなら、言ってくれれば良かったのに。ぼくがどれだけ……」 　明がテラを、難物だと評価した、本当の意味に初めてハナは思い至った。 　確かにこれは、御し難い。でも、そんなテラも、出逢った頃を思い出すと、好きになってしまうハナだった。 「その顔。きみは怒っても魅力的だ。泣いても素晴らしい。笑っても申し分なく、哀しい顔はさせたくないが、そのどれもを愛している。──愛しているよ、ハナ」 「っ……」 　突然の愛の告白に、ハナはずるい、と思った。 　こんな風に言い訳されたら、怒るはずのことも、怒れなくなるではないか。 「馬鹿……っ」 　ボソッと呟いたハナに、テラは今度こそ真心からのキスを送る。 「愛している。きみに罵られるのがこんなに楽しいとは。きみはわたしをその気にさせる天才だ。わたしがいない間、どうしていたか、聞かせてくれ」 　テラにはかなわない、と思いながら、ハナは思い切って言った。 「あなたがいない間は、寂しかったです。心も、身体も」 「わたしもだ。……愛している。わたしだけの、ハナ」 　寂しさに泣く夜は、もうこない。 　二人なら、この先、何が訪れても、きっと怖くない、とハナは思った。 ＝終＝