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第6話
〝そんなの……っ〟
どくんっと胸が跳ねた。
「え」
かっと身体が熱くなる。身体の中がいきなり発火したような……異様な感覚。
〝な、何……?〟
どくっと再び心臓が跳ねる。手足がすうっと冷たくなって、逆に頭は真っ白になるほど熱くなって。
「……どうしたの?」
突然黙り込み、両手で自分の胸を押さえた千晶に、香月が尋ねた。
「気分でも悪いの?」
「……いえ……」
心臓が胸を破りそうだ。机の上に水滴が落ちている……と思ったら、それは自分の額から落ちる汗だった。
〝うそ……〟
全身が火を点けたように熱い。特に……身体の中心が……熱くてたまらない。はっとして、自分を見下ろす。
〝まさか……〟
制服のスラックスに視線を落とす。薄い夏物のスラックスのフロントがふっくらと持ち上がっていた。
〝勃って……る……〟
なんの刺激も与えていないのに、いきなり自分が性的な興奮状態に陥ったことに、千晶は愕然とする。
「桜庭くん……?」
息が荒い。今にも、声を上げてしまいそうだ。身体が燃える。
〝これって……〟
思わず、身を縮めてしまう。熱い。熱くてたまらない。服を脱ぎ捨ててしまいたい。脱ぎ捨てて……。
「……っ!」
ふいに腕を掴まれた。
「……い、痛い……」
凄まじい強さだ。指先が痺れるほど強く、腕を掴まれる。
「……え……っ!」
引きずり上げられるようにして椅子から立ち上がらされた。音を立てて、机の上のノートやテキストが床に払い落とされ、恐ろしい力で、千晶はその机の上に押さえつけられる。
「な、何……」
仰向けに押さえつけられ、強引に制服のスラックスを引き下ろされる。ベルトも外していないので、白い肌に薄赤い擦過傷ができたが、お構いなしにスラックスを脱がされ、下着を下ろされた。
「い、いや……いや……いやぁ……っ!」
下半身を裸にされ、大きく両足を広げられて、千晶はようやく自分の身に何が起ころうとしているのかを理解した。
「やめて……やめて……っ!」
「……薔薇の……香りだ……」
低い声が聞こえた。熱い手が、千晶の内股をさすり上げ、大きく左右に押し開く。すでにそこはとろとろとしずくを溢れさせていた。
「ものすごく……いい香りだ……」
この狭い部屋には、千晶の他には一人しかいない。
「……いい……香りだ……」
彼の目が吸い寄せられるように、千晶の柔らかく濡れた花びらを見つめている。
唐突に訪れた、初めてのヒートだった。ヒート期に入ったオメガは、常にセックスができるように身体が潤い、高まる。体温が急激に上がるため、衣服を着けているのがつらくなる。そして、その身体からは、アルファを惑わせ、引き寄せる強烈なフェロモンが発散される。それは甘い香りとなって、アルファを狂わせる。蜜に群がる蜂のように、アルファを引きつける。
「や……あ……ああ……っ!」
思い切り、制服を引き裂かれた。千晶は恐怖のあまり、動けない。裸にされて、机の上に引きずり上げられ、強引に身体を開かれる。
「あ……あ……ああ……ん」
すでに、千晶の大切な宝珠は柔らかい草叢の中で持ち上がり、花びらから溢れ出すしずくで、太股までとろとろに濡れている。
身体が熱い。溶けてしまいそうだ。苦しい。息が苦しい。意識が混濁し始める。何もわからない。何も……。
「あ、ああ……っ!」
いきなり、燃えるように熱いもので、花びらを破られた。
「いやぁ……っ!」
痛みはない。ただ、熱い。圧迫感が凄まじい。息ができず、頭の中が真っ白になる。
「あ、あ、あ……っ」
彼は立ったままだった。裸の千晶を机の上に押さえつけ、立ったまま、いきなり挿入してきたのだ。細い千晶の腰をあざがつくほどに掴み、突き上げてくる。
「あ……っ! ああ……っ! ああ……ん……っ!」
めちゃくちゃに揺さぶられながら、千晶は悲鳴を上げ続ける。
「い、いや……っ! やめ……て……っ! いやぁ……っ!」
「ああ……いい……」
彼が熱に浮かされたような、吐息混じりの声を洩らす。
「……いい……すご……い……」
「あ、ああ……っ!」
むき出しのお尻を揉まれながら、激しく突き上げられる。びりびりに引き裂かれた制服の上で、千晶は犯される。
「いや……いやぁ……」
悲鳴が少しずつ小さくなっていく。代わりに、甘ったるい吐息と微かな喘ぎ。桜色に上気した肌から、むせかえるほど甘い薔薇の香り。
「あ……ん……あん……っ」
「……ああ……でる……」
彼が激しく腰を揺する。さっきまでの優しさをかなぐり捨てて、まだ未熟な千晶の身体を蹂躙する。千晶の痛々しいほど細い腰をぐいと抱え上げ、両足を思い切り押し開いて、深々と楔を突き刺す。
〝瞳の……色……〟
激しく揺さぶられながら、千晶は彼の瞳の異様な輝きに、思わず息を止めた。
〝銀色……〟
それは、アルファの中でも特に能力の高い、通称『S』と呼ばれる特別なアルファにのみ現れる特異な形態変化だった。
〝やっぱり……アルファだったんだ……〟
胸の中にひとしずくだけ残っていた淡い思いが、泡のように弾けて消えていく。
〝アルファだから……僕に……〟
アルファはオメガに引き寄せられる。それは運命でもなんでもなく、ただの本能。性的な興奮を伴う、原始的な……本能。
「でるぅ……っ」
思い切り仰け反って、彼が千晶の中に欲望を吐き出す。銀色に輝く瞳がぎらぎらと異様に光り、桜色に上気して、微かな痙攣に震える千晶の身体を舐めるように見つめる。
「あ、ああ……んっ!」
容赦なく、体内に熱いものをたっぷりと注がれて、千晶はぽろぽろと涙をこぼしていた。
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