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「緊張」

「すげー久しぶり。オレんち」  快斗が笑いながら、自分の家を見上げてる。 「なー、快斗? 先にうちに、お泊りグッズ取りに行くけど」 「あ。オレもおばさんに挨拶いく」  そう言う快斗と一緒に、オレの家に入った。 「母さん、快斗来たよー」  声をかけると、母さんが玄関に迎えにきた。 「快斗くん 久しぶり。元気そうね!」 「はい。おばさんも元気そうで良かったです」  快斗がにっこり笑って、母さんと話してるのを横目に、オレは自分の部屋に用意してたお泊りグッズを取りに行く。  その間も、母さんの楽しそうな笑い声。  母さん、快斗、好きだからなあ……。  苦笑いしつつ、準備をして、1階に降りる。 「快斗、荷物取ってきた。行こ?」 「ん」 「あ、待って。食べ物と飲み物、適当に買っといたから、これ持ってきなさい。バスタオルとかタオルはリビングに置いといたし、シャンプーとかも置いてきたし。 冷蔵庫もさっき電気いれてきたから、使えるはずだけど… とりあえず、明日2人で朝ごはん、食べにきてね」 「ありがとうございます」 「母さんありがと。じゃーねー、おやすみー」  買い物袋2袋を持たされ、お泊りグッズと共に家を出た。  快斗の家について、快斗が玄関の鍵を開ける。 「おばさん、布団干しといてくれたって。ずっと換気とかもしてくれてたみたいだな」 「うん、よく窓開けてたよ。でもオレは、快斗が居なくなってから初めて入る」 「そっか。 な、愁、少し休む? それとも今シャワー浴びる?」 「んー…… 先シャワー浴びていい?」 「いいよ。ちょっとオレ、色々部屋準備しとく」 「うん」  快斗の家の家具や、クーラーなどの大きい家電は、ほとんどがそのまま残ってる。数年で戻る予定ということで、転勤先では家具家電付きの家を借りたらしい。  だからこそ、快斗はこのままこの家で一人暮らしすると、ずっと訴えていたみたいだけれど。 それでも、家具の中身は大部分持っていってるので、すごく変な感じ。  ベッドとマットレスはあるけど寝具はない。冷蔵庫はあるけど、当然中身は入ってない、食器棚も中身がない。電話などを置く棚はあるけど、何も置いてない。  バスルームの脱衣所には、母さんが置いたと思われる新品のシャンプーやボディソープなどがちょこん、と置いてあった。  シャワーを頭から浴びて、はあ、と息をついた。  快斗がこっちに来る事になった時、  一緒に、この家に泊ってくれる?と聞かれて、すぐ、良いよと、頷いた。 「――――……」  よく考えたら。  ……好きって言われてから、初めて2人きりで夜過ごす訳で……。  何も考えず、すぐに頷いてしまったけれど。  さっきこの家に入って、2人きりの静かな空間に入って、あらためて、その事に、気づいた。    ……貞操の危機? 「――――……」  ……は。  何考えてんだ、オレ。……んな訳ないか。  思わずブンブンと頭を振ってしまう。 「……はー……」  何だかどっと疲れてため息。

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