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「一緒にお布団」

「でもさ、愁、頑張んなくていいよ」 「……?」 「自然と、好きだって思ってもらえればいいからさ」 「――――…」 「ただ、オレの気持ち疑ってんなら――――…ほんと、試してみような?」  くす、と笑んで言われて、また赤くなったオレを、よしよしと撫でて。  快斗は腕を解いた。 「快斗」 「ん」 「……オレ、快斗が帰るまでに、ちゃんと考えるから」 「ん。でもいいよ。 別に、ここで決めなくても、いいから」  またよしよし、と撫でられる。  それ以上何も言えず、すこし黙っていると、快斗が立ち上がった。 「布団はいろっか?」  時計を見ると、いつの間にやら、もういい時間。  寝る準備をして、並んで布団に寝ころんだ。  うつぶせに転がって、肘をついて、少し体を起こして、快斗に顔を向ける。 「こーやって一緒に寝るのも、すごい久しぶりだね……」 「あれだな、オレの転校を阻止しようって、2人で企んでた時が最後かもな」 「結局転校になっちゃったけどねー……」  ごろん、と転がって、あおむけになる。 「オレが居ない学校、すぐ慣れた?」 「んー……すぐ慣れたっていうか……諦めた、かなあ」 「諦めた?」 「そう。 もう居ないんだって、諦めた。 オレ、今も慣れてはないよ。快斗、居ないなーってやっぱり思う。 帰り道とかもさ。ずーっと一緒に帰ってきてたじゃん?  慣れはしないけど……でも、もう居ないんだって、諦めてた感じ」 「――――……そっか。……寂しかった?」 「……当たり前じゃん」  ふー、と息をついて、またうつぶせになって、枕に突っ伏す。 「快斗はさ……なんか、オレに好きとか言ってさ。いい機会かもとか言って、離れて考えて、とかさ。 それで居なくなっちゃったけどさ……」 「――――……ああ、言ったな……」 「……こっちはさー……大混乱だよ、もう」 「――――……」 「……快斗居なくて寂しいのに、それより、好きって何?ってなってたし、 快斗はいい機会だからとか言って、オレと離れるの、なんなら良かったって思ってるのかなーとかさ……」 「――――……」 「……ほんと、もうしばらく、大変だったんだからな」  当時を思い出してると、ついつい恨み言になってしまう。 「……ごめんな、愁」  そんな声に、快斗を見ると、苦笑いを浮かべている。 「…そーだよなー…大混乱だよなー」 「そーだよ。もう。快斗ってば、最後に、何してくれてんのって、思ったからね」 「――――……言えばよかったのに。 あんなに毎日電話してたのに」 「……好きって事に、電話で触れるのは怖くてさー……」 「……そっか。オレはさ、実は愁って、もしかして、冗談だと思ってるのか、忘れてんのか、どっちかかなーと思ってた」  ぷぷ、と笑って、快斗が言うので、「そんな訳ないじゃん!」と枕を投げつけた。可笑しそうに笑って、快斗が頷く。 「駅で会った時、愁がすごく緊張してたから、それですぐ、ちゃんと分かってくれてるって分かった」  快斗にクスクス笑われてそう言われる。  そりゃ、するよね。  ――――……LOVEで好きって言ってくれたまま離れてた、大好きな幼馴染と、久しぶりに会ったんだからさ……。

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