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「可能性」
「快斗はずっと人気者だった記憶しかないんだけど……」
「……愁の記憶って、ほんと、オレに都合がいい気がする」
ぷ、と笑って、快斗はそう言う。
「何の話……? それ」
「んー……オレ、幼稚園こっちじゃなくて、小学校からだったじゃん」
「うん」
「なんかさ。女子が、快斗くんが好きとかカッコイイとか言ってさ……女子にすごいモテちゃってさ……」
「うん。それで?」
「それでって……少しはつっこんだら? モテちゃったって話題のところ」
「……モテてたのはずーっと、そうだから、もう今更突っ込む気もしないんだけど……」
そう言うと、快斗が、苦笑いを浮かべてる。
「オレ、女子にモテたせいで、男子にすっごい嫌われたんだよね」
「……そうだっけ……?」
「愁とは、入学前から家の前で遊んでたし、愁が公園で遊ぼうっていうから、一緒に公園行くとさ。あからさまに仲間外れにされてさ。女子と遊べばいいだろって言われたり」
「……そうだっけ……?」
「その頃は、ムカつくけど、うまい言い返しも出来ないし。愁が遊んでくれるからいいやと思って、愁が誘ってくれるまま、公園に行ってたんだけど」
「うん」
「―――……何回か、公園で遊んでたら、愁が、その仲間外れに気付いたんだよね。で、すぐに、快斗を仲間外れにするなら、オレも遊ばないから、って愁が言ったの」
「……」
遠い記憶を呼び戻そうとするけど……全然、全く記憶がない。
そんなことあったっけ……??
「全然覚えてないだろ……」
頷くと、クスクス笑われる。
「あの頃公園で遊んでた子たちは、愁と幼稚園から一緒の仲良したちだったからさ。――――……おかげで、その日から、オレ、皆と遊べるようになったっていうか」
「――――……んー。それ、オレのおかげとか思ってるの?」
「思ってるよ」
ふ、と笑う快斗。
「オレ覚えてないけど……そん時オレが快斗をかばわなくたって、その内皆さ、絶対快斗のこと好きになってたと思うけど」
そう言うと、快斗は、肩を竦めて、オレに笑って見せる。
「分かんないじゃん。そん時、愁がかばってくれなかったらさ、オレ、めちゃくちゃいじけて、そういう性格の奴になって、学校行かなくなって、そしたら、そのまま嫌われてたって可能性だってあるだろ?」
「――――……なにそれ」
「可能性の話。 ……何で人生変わってたか分かんないだろ?」
冗談なのか本気なのか。
ふ、と苦笑い。
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