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第40話

うろたえる玲音はズボンを穿こうとする俺の手を掴んだ。 驚いて玲音を見ると長い前髪越しに真剣な眼差しを向けられる。 玲音の手から暖かい体温が俺の手に染み渡り、握り返した。 玲音、急ぎじゃないから別にまた今度でもいいんだぞ。 今は熱もだいぶ引いたし我慢出来ないほどではない。 玲音はなにか考え込んでぶつぶつと言っていた。 「……よく考えたら医者でも瑞樹の裸見られたくないし、俺が見るよ」 「…………いや、無理しなくても」 「見るの!!」 ムッとした玲音は俺の肩を掴んでソファーに押し倒した。 途中まで穿いてたズボンのせいで受け身が出来ず、背中が痛い。 玲音は中途半端に下げられたズボンを脱がせて、ゆっくり俺の足を開いた。 玲音の手が震えているようだけど本当に大丈夫か? なんか恥ずかしい、自分で見てくれって言ったのに… 玲音も同じ事を考えているのかさっきより頬が赤いように思えた。 「……なんか、イケナイ事してるみたい…っ!?」 「玲音?どうかしたのか?」 玲音は俺の内腿に目線を向けて確認して固まった。 やっぱり玲音もこの紋様は普通じゃない、変に思うよな。 確認するようにソコに触れるからくすぐったくて体が震えた。 いや、それだけじゃない…玲音が触れた場所がまた熱くなり始めた。 ヤバい、この状況だと玲音に俺の反応しているところが全て丸見えだ。 足を閉じようとしても玲音の力が強くて閉じる事が出来ない。 仕方ない、息を吐いて落ち着こうと頑張ってみる。 「…うっ」 「瑞樹、これどうしたの?」 「……分から、ない…昨日風呂入った時にはなかった…玲音はなにか知ってるのか?」 「………これは…その」 玲音は目を泳がせていて言葉に詰まっていた、絶対になにか知っている反応だ。 なんだ?なんなんだこれは…そんなにヤバいものなのか? 一気に謎の不安が襲うが玲音は答えてくれなかった。 玲音は「さっきの姫の力が関係してるのか…」とぶつぶつ呟いていたが今の俺はそれどころではなかった。 なんだ、これ…玲音に触られただけなのにさっきよりも酷く熱っぽい。 風邪のそれとは違い、下半身に熱が全て集中している気がした。 玲音も気付いたのか驚いた声で「…瑞樹?」と静かに口にした。 瞳が潤み、頬を赤らめている俺は玲音の目から見たら興奮しているように見えるのだろう、これじゃあまるで変態だな。 早く病院、行かなきゃ……これは、我慢の域を越えている…手遅れになる前に、早く。 そう思っていたらピリッと静電気のような衝撃が体中を包み込んだ。 「あっ!」 驚いて玲音を見た、そしてさらに目を見開き驚いた。 玲音は何も言わず静かに俺の下着をずらしていた。 さっきの衝撃は布が擦れる刺激だったのだろう。 何をしてるのか、下着まで下ろす必要があるのか分からず玲音の手を掴む。 玲音はさっきの戸惑う声ではなくまっすぐと俺を見つめていた。 今では俺の方がこの状況に戸惑っている、死んだりする病気なのか? 「瑞樹、これは我慢しちゃだめだよ」 「…えっ?なに、が?」 「この紋様は瑞樹の意思を無視して相手を求めてしまうものなんだよ」 「はぁ、はぁ…ひっ」 「大丈夫、俺に任せて」 紋様ってなんだ?これはなんだ?わけが分からない。 頭がパニックを起こして額に触れて熱に抗おうとしていたら、玲音が俺を抱き締めて耳元で「俺に、瑞樹の愛をちょうだい」と妙に男らしい低くよく透き通る声で言われて何だか頭がボーッとして思考が停止する。 ……愛ってなんだ?与えるってなんの事を言っているんだ? 頭の中で何度も何度も玲音の言葉が繰り返される。 俺は生まれてからずっと、愛というものを知らなかった。 愛された事がなく、俺自身も誰かを愛した事がなかった。 そんな俺が誰かに愛をあげる事が出来るのか? 俺の愛を玲音は本当に求めているのか? 「…れ、おん…俺に愛をくれるのか?」 「瑞樹がくれるならここいっぱいに溢れても与え続けるよ」 そう言った玲音は俺の胸を真っ赤な舌で撫でて軽くリップ音を鳴らし吸った。 今までそこに感じた事なんてなかったのに、ビクビクと快楽に体が震えた。 俺が玲音に手を差し伸ばしたら玲音は指を絡めて握りあった。 すると俺達の手を包み込むようにして光り始めた。 でも俺達は気にする事なくお互いの瞳に写した。 「…俺は愛とかよく分からない、玲音に与えられるか分からない」 「瑞樹は愛を受け入れるだけでいいんだよ」 「でも、その愛って事は…玲音と…恋人になるって事なんじゃないのか?俺は男同士とか種族が違うとか、まだ何も理解していないのに中途半端な気持ちで玲音と付き合えない」 玲音は友人として好きだ、これは胸張って言える。 でも恋人と友人は全然違うものなのは俺でも分かる。 こんな変な体の状態で付き合えない、玲音もきっと一時的な気の迷いだと思う。 俺が可笑しいから、玲音も可笑しいのだと思った。 玲音はキョトンとした顔をしていた、そんな顔をされるような事を言っただろうか。 そう思っていたら次はとても嬉しそうに笑っていた。 俺は玲音と付き合えないと言ったのに、なんでそんな顔をするんだ?やっぱりからかわれただけなのか? そう思っていたら突然下半身の刺激で再び体に熱を持つ。 恐る恐るそこを見ると玲音が自分のを俺に押し付けて擦っていた。 薄い生地の下着が玲音の硬いズボンに擦れて少し痛いがそれも一瞬で甘い痺れに変わる。 「あぁっ!」 「瑞樹が俺の事っ、真剣に考えてくれて嬉しいなぁ」 「あっ、たりまぇっ……もうっ、動くなぁ!!」 「分かった」 玲音は俺の言葉を守りあっさりと下半身の動きを止めた。 はぁはぁと荒くなった息を吐いて落ち着かせた。 でも下半身は萎える事なくはち切れそうなほど痛い。 玲音はさっきの続きと言わんばかりに俺の下着に指を掛けた。 もう俺に抵抗する力は持っていなくて玲音がする事を黙って見ていた。 ゆっくりと露になる下半身はもう既に完勃ちしていた。 「瑞樹は気にしなくていいんだよ、だって瑞樹はXXXなんだから…ただ好きでいいんだよ、瑞樹は誰のものにもならない存在だから」 玲音がなにか大切な事を言ってる気がしたが、分からない、聞こえない。 まるで自分ではないような不思議な気持ちだった。 でも、その分からない中でこれだけは確かに分かった。 『この男が欲しい』という本能が俺の中にあった。 男にそういう感情を抱いた事がなかったのに何故だろうか。 まるで俺ではないなにかの意思を感じられて怖かった。 いや俺は俺だ、それ以外になにがあると言うんだ。 玲音の唇がゆっくりと動くのをぼんやりと眺めていた。 「さぁ、愛の共同作業を始めようか…瑞樹」 触れられた場所が熱を持ち、俺を支配していく。 そうか…きっとこれが、愛されるという事なのだろう。

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