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たぬきの凡太 その三

「へぇ、自分でやったことないの?」  ゆるゆるとした慣れた手つきで薄皮に包まれた陰茎を扱かれ、ぽん太は頬を朱に染めたように真っ赤になってしまう。  なんでこんな事をされるんだろう? という疑問が頭をもたげながらも、鋭く淫靡な快感が奥底からこんこんと泉のように湧きでる。 「ぁ……、なにこ、れ……」 「自慰だよ? 知らない?」  頭のなかが真っ白になり、登りつめて眩い光で目の前が霞む。弾かれた木の実が脳内を飛び回り、ぽん太はむず痒い快感に悶え、浅黒く太い太腿が痙攣した。初めての悦楽はぽん太には刺激が強すぎた。抗うことも、逆らうこともできずに伊集院の手に犯されて導かれるように疼いてしまう。 「や、や、やめ……」 「いきそう? ねぇ、いっちゃう? 可愛いな。あ、でもお尻を擦りつけてない? 習性かな? ふふ、狸は尿をかけ合うっていうけど僕にかけちゃう?」  怖いこわい怖いこわい!  甘い息遣いが耳朶に触れ、尚も尻を伊集院の制服に擦りつけていることに気づいてしまう。でも止まらない。どうしよう。こんなの親でも教えてくれなかった。  逃げたい、でも動けない。 「たっぷり、だしていいよ」  落ち着いた声で、かつ冷淡な笑みを浮かべて伊集院は動きを速めて扱いていく。  びゅるっとした白濁の精液がてのひらにむかって飛散し、伊集院はその手を吸い取るように舐めた。 「うーん、味は普通かな?」  垂れ落ちた精液が眼鏡の淵に付着しながらも、伊集院は蕩けるような満ち足りた微笑を漂わせ、熱を帯びた視線をぽん太に注いだ。  …………こわい。  ぽん太は青ざめた表情で、初めての賢者タイムを絶望にて過ごした。

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