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たぬきの凡太 その二

「バァン!」  耳が裂くような音にびくっとぽん太は体をのけぞらせ、気絶してしまう。  ふさふさふさ  なぜか尻がむず痒くなり、ぽん太は両膝にすりすりと擦りつける感触にきづく。つたない意識のなか、ぽん太は記憶を反芻する。たしか放課後、隣の伊集院に学校を案内してもらったはずだ。資料室に忘れものをしたと伊集院が思い出したように頷いて、後ろを歩いていたら急に押し込まれた。それなのに、どうしてだろう、下半身が薄ら寒く感じてしまう自分がいる。 「ふーん、たぬきの尻尾によく似てるな」 「ん……?」 「あ、目が覚めた?」  重たい瞼をひらくと、ぽん太はぎょっとしてしまう。下半身が裸だ。 「え?」 「きみ、人間なの?」  首を傾げ、にこっと口許に微笑を浮かべながら伊集院が涼しげに声をかける。表情を読み取ろうとしても、眼鏡のせいで何を考えているのか読み取れない。好奇心が疼いているのか、それとも排他的なものなのか……。 「に、人間だよ……」 「でも陰嚢が少し大きいよね? 尻尾もあるし、これじゃまるで狸だ」 「えっと……」  まだ転校して初日だ。ここで退学になったら、入学金、学費、月々の寮費や生活費が泡となり無駄になってしまう。  狸ぽんぽこ村が総出をあげて貯めてきた財産と努力が一日で無と帰する。役立たずのぽん太と後ろ指をさされ、一家は村八分にされてしまう可能性だって否めない。  ぽん太の頭の中でぐるぐると蝶のように雑念が舞って、ぱくぱくと乾いた空気が口の中で循環する。 「こうやって刺激したら勃起もする?」  どうやら椅子に腰掛けた伊集院の膝にのせられ、ぽん太は抱きかかえながらも両足で股間を広げられていた。 「あっ、やだっ、だめ……」  ぽん太はまだ精通すらしていなかった。 「きみって、興味深いね」

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