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◇中身も好き*圭

「織田」  高瀬に、後ろから、こそ、と話しかけられる。 「ん?」 「……どーする? 一緒に帰る? 残る?」 「あ……高瀬、帰るの?」 「ん、帰ろうかな」  時計を見ると、20時過ぎ。もう2時間位は居たのか。 「オレも一緒に帰る」 「OK、いこ」  皆に別れを告げて、2人で、桜の下を歩き出す。 「……楽しそうだったけど。 良かったのか?」 「うん。楽しかったけど。今日はもういいや」  ――――……高瀬と、このキレイな桜並木、歩きたかったし。 「土日、ゆっくり休んで来いよな?」 「友達と遊ぶとか、飲みの予定があるんだけど……日曜は早く寝る!」 「ん。来週、また頑張ろうな」 「うん。またよろしく」  頷いて、隣を歩いてる高瀬を、見上げる。  見上げる、という位置にある、超カッコイイ顔が、すぐ、こっちを見て、優しく笑む。 「――――……」  ……高瀬って。  ……普通じゃない位、カッコいいんだから、そうやって、優しく笑うの、絶対やめた方がいいと思うけど。 「高瀬、女子に囲まれてたね」 「――――……別に女子だけじゃないけど」  高瀬は、クスクス笑って、そう返してくる。 「高瀬ってさ、それだけカッコイイとさあ」 「は?」 「どんだけモテる??」 「……どんだけって――――……難しいなその質問」 「……毎日告白されちゃうとか」 「無いよ。なんだよそれ」  高瀬に笑って見つめられて。  一瞬、退く。 「……まあそれは冗談だけど……モテるだろうなーって思って」 「――――……つか、織田こそ、モテるだろ?」 「オレ? うーん。学生ん時は、彼女居ない時期、無かったかもしれないけど……高瀬がモテるのとはレベルが違う気がする……」 「――――……オレがモテるかどうかなんて、まだ分かんなくねえ?」 「いや、分かるでしょ……」  今日この花見だけだって、モテてるの分かるし。ていうか、何なら、新人研修、女の先輩だと、すっげー高瀬に近い気がするし?  ……ていうか、オレも。  ――――……すべての常識飛び越えて、一目惚れしちゃったしなあ……。  ……オレにモテても困ると思うけど。  ……はー。 「……どした?」  急に黙ったオレは、少し背をかがめた高瀬に、顔をのぞき込まれる。  また、優しい瞳。 「な……っんでもない」 「――――……」  動揺しながらそう言うと。  高瀬が一瞬黙って。それからまた、ふ、と笑う。 「……顔、赤いけど、織田」 「……ライトアップのせい」 「じゃ、オレも赤い?」 「……赤いかも」 「……顔見てねーけど?」  クスクス笑いながらも、優しい声で言う高瀬に。  めちゃくちゃときめきつつ。  綺麗な桜を、見上げた。  ――――……高瀬が、見た目だけの男、だったらなあ……。  究極カッコいいと思うけど、実際関わったら、ちょっと嫌な奴だった、とか。冷たかった、とか。合わなかった、とか。  そう言う事があったら、オレ、こんな感情すぐ放棄できたのになあ……。  今となっては、中身の方が好きかもしれない。 「――――……」  高瀬と歩いてると。  余計。  桜。 綺麗に見える。って。  ――――……ほんとやばいなあ。オレ。  ……高瀬が優しすぎるから、だめなんだと思うぞ。  隣で、楽しそうに笑ってる、高瀬を。  ちょっと、恨めし気に見てしまうけど。  それも少ししか続かず。  2人で歩くの、楽しすぎて。  ずっとこの道が続けばいいのになー、なんて。  思った。

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