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◇深夜*圭
ふ、と目が覚めた。
少しの間、記憶を探す。
……そか――――……今日も、高瀬んちだ……。
入社して3か月。
最初の1ヶ月は同期達と飲む機会が多かったけど、その後は、チームだったり、指導の先輩達とだったり、部だったり、また同期だったり。
昨日も飲み会だった。
ほんと会社って、飲み会多いなぁ……。
楽しいし、好きだから良いけど。
――――……それ、ほとんど全部、高瀬、居るし。
しかも途中から、飲み会の後は高瀬んちに来る事が多くて。
ちょっと食事がてら飲むのとは違って、飲み会となるとやっぱり金曜が多いから、そのまま土曜も一緒に過ごす事がほとんど。
高瀬と過ごすかもしれないからって、もう、土曜は予定を入れないようにしてしまった位、ここ最近は、高瀬と居る事が多い。
――――……いいのかな、こんなに、なんか、高瀬とずっと居て。
高瀬からいつも、今日泊まりに来る? 明日は空いてる? と聞いてくれるし。いつもだけど良いの?と聞くと、嫌なら誘ってないよっていつも言うから、それはそれでいいのかなって思うんだけど……。
こんなにずっと、高瀬と過ごしてて、いいのかな。
……彼女は居ないって言ってるから、まだ、大丈夫なのかな……。
なんて、いつも、気になってしまうけど。
泊りに来ると、高瀬のベッドの隣に、布団を敷いてくれる。
ゆっくり、顔をベッドの方に向けると。
高瀬がちょうどこっちを向いて、寝ていて。
片手がこっちに向かって少し落ちていた。
――――……寝てても、カッコイイなあ。高瀬。
……手。触りたい。オレが少し手を伸ばしたら、繫げる。
……いやいや。無理。
起きたらどうすんだ。
……じゃなくて。
――――……手に触りたいとか。絶対おかしいでしょ……。
はー……。
……高瀬が好き。
好き過ぎて、ほんと、どうしよう。
――――……オレの好きの意味を、高瀬が知ったら。
オレとは、一緒に居てくれない、よな……。
自分で勝手に思って、ぐっと切なくなる。
――――……高瀬が好き。
一目惚れした時の、何倍も、もう好きになってて。
好きな女の子が出来るまでなんて言ってたけど、このままじゃ、女の子が入ってくる心の隙間なんて、1ミリもないしなー……。
そもそも、同じ職場に、しかも同じチームの席が隣になっちゃうとか、オレってば、運が良いのか、悪いのかが、正直、分からない。
高瀬と一緒なのは、もう、すごく嬉しいから……運がいいと言えると思うんだけど。……諦めるには、側に居ない方がいいから、そこから言うと、もう、運が悪いとしか、言いようがない。
もう、最近、いっつもおんなじこと、思ってしまう。どっちが良いんだろう。離れちゃった方が良いのか、今のままが幸せなのか。答えは、出ないし。出たからって、人事異動がそんな願うまま通る訳も無いし。
毎日毎日、大好きって思ってしまう。
――――……たまに思うんだけど。落ち着けって。
かっこいいし、仕事出来るし、優しいし。
……でも男なんだから、好き好きばっかり思ってないで、ちょっと落ち着けよ、オレ。て、自分に言い聞かせているんだけど。
――――……全然、落ち着いてくれない。
好きって思おうとしてるんじゃなくて。
優しい言葉が来るたびに。
優しい視線が向けられるたびに。
……なんなら、姿が目に入るだけで。
胸が、どきん、として。
勝手に、思い知る感じ、だし。
なのに、こんなに、週末一緒に居ちゃうと。
想いは募るばかりで。
もう、忘れられる気がしなくて。
ちょっと最近、困ってる。
困りながらも好きで、一緒に居ると、浮かれてる。
でも、離れると、恋しすぎて、でもこんなのダメだと分かってるから、また困るし。
「――――……」
高瀬、好き。
――――……でも困る。
キレイな顔。
――――……ほんと、何でこんなにカッコいいかな。
高瀬の部屋。
黒が基調で、統一されてて、キレイ。オシャレ。
水周りとかもいつでもキレイ。
まとめて掃除するの?と聞いたら、ふと気づいた時に、ささっと掃除するらしい。
全部、適度に整ってて。
スーツ着てる時の、ちゃんとした高瀬のイメージ、そのまんまの部屋。
居心地よくて、
部屋に居るだけでも、高瀬の事が好きって、思う。
――――……ダメだ。
好きしか出てこない。
嫌いなとこ、ないのかな、って、考えるんだけど、全然出てこない。
もうほんとに。
――――……困る位。好きで。
ほんと、どうしようかな……。
そんな事を思いながら、高瀬の寝顔を見ていたら。
またいつしか、眠りに、ついていた。
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