26 / 235

◇深夜*拓哉

 織田は、布団に横になると、すぐに眠り始めた。  さっきまで眠そうにトロトロしてたし、まあ、当然。  オレも今日は結構飲んだ気がする。  ――――……ベッドに横になって、そのまま、下に寝てる織田を見つめる。  ――――……可愛いとか、そんな風に、どうしても思ってしまう。  男なのに、なんでこんなに、可愛いんだろう。  織田。  自分のこの感情が、ものすごい不思議。  なんとなく手を伸ばしかけて。触れる訳にはいかないので、そのままぱたん、と手を落とした。  ――――……最近いつも、金曜に誘って土曜まで一緒に過ごす。  さすがに日曜まで拘束したら嫌がられそうなので、土曜で別れる。  金曜誘う時も。その後土曜の事を聞く時も。  いつも今回は断られるかなと、内心少しドキドキしながら誘う。  最初の頃は、よく土日ともに友達と予定を入れてたのを何となく聞いてたから、そういう事もあると思うのだけれど。  最近は、土曜には予定を入れてないみたいで。  ――――……オレと、過ごしてくれるからかなと、思ったりもする。  相変わらず、織田からの、大好き光線は飛んでくるけど。  そしてオレも、それが嬉しくて。――――……こっちも負けず、織田の事が可愛くてしょうがないのだけれど。  一歩も前に進めないまま、時が過ぎていく。  きっとオレ達はこのまま、進むんだろうなと、諦めの気持ちもある。  もともとオレは結婚願望なんか無いし。  今まで生きてきた中で、一番好きな織田ともしそういう関係になれるなら。それで一緒に生きていけるなら、全然、男が相手でも、もはや良い気がしてきているのだけれど。  織田は、子供が欲しいって言ってたし。  仲の良い両親と、5人兄弟なんかで育って、それで3人は子供欲しいとか言ってるし。  て事は。  ……たとえ今付き合えたって、必ず、別れが来るって事で。  ……というか、付き合う前から、終わりが見えてるし。  お互い傷ついて、修復不可能な別れになるだろうと、思う。  そんな事になって、織田を傷つける位なら、今のこの関係のまま、今の好きが、友人としての好きに変わるのを待つのが、最善。  そんなに考えなくても、その答えは、簡単に出ている。  だから、何度も、すごく好きだと思う度に、セーブして。  ――――……なら一緒に居なきゃいいのにと思うのに、どうしても織田を見てると一緒に居たくて、毎週のように、家に連れて帰って来てしまう。  ……仕事中だってずっと隣なのに、なんでこんなに、一緒に過ごしたいのか、もうそれだけだって、今までのオレからしたら、謎すぎて。  大学から一人暮らしを始めたけれど、その頃から、あまり、人を家には入れてはいない。  付き合ってたって、家にはそんなに呼んでない。  来たがる子を、そこまで拒否る事もないかと思ってOKして、何人かは来たけれど、結局、家に呼んでまで一緒に過ごしたいとは思わなかったから、皆、家に招き入れたのは、一度ずつ。  オレにとって家の中は、完全に1人でゆっくりするための場所で。  誰かと過ごしたい場所じゃなかったのに。  ……毎週連れて帰ってくるとか。  ……どんだけだ、オレ。 「――――……織田……」  小さな声で、呼んでみるけれど。  スヤスヤ幸せそうに寝たまま、全然動かない。  ――――……織田。   何となく――――…… お前が困ってるのも、知ってる。  男とそんな風になる気はないのに、オレを好きだと思うの、  多分、織田は、嫌なんだと思う。  オレが、まずいと思いながら、好きだと思って、困るのと一緒で。  素直だから、大好き、て顔を するけど。  たまに、切なそうな、困ったみたいな顔もしてる。  だから、本当は――――……。  オレ的にも、きっと織田的にも、  会社以外で、こんな風に会わない方がいいのは、分かってるのに。  ……関係を進められなくても、一緒に居たいと思ってしまって。  毎週連れてきて。一緒に過ごして。  織田と居ると、楽しくて、幸せなんだけど、  ――――……本当の気持ちは前には出せず、抑え込み続けるのって、結構キツイんだと、最近思うようになってきた。  すべき事、すべきじゃない事は、分かってるのに。  なのに、感情が抑えられなくて、結局やってる事は、すべきじゃない事で。  もう、意味が分からなくなってくる位。  すげー好き……なんだよな……。  オレ、お前の事――――……。  抱き締めたいと思いながら、同じ部屋でこうして寝るのも。  そろそろ、限界かなー……と、思いながら。  いつの間にか、眠りに、ついていた。

ともだちにシェアしよう!