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◇夏って*拓哉
昨日、何だか色々考えながら眠った朝。
目が覚めると、まだ織田はスヤスヤ眠ってた。
Tシャツとジーンズに着替えて、部屋を出た。
顔を洗って、コーヒーを淹れる。
テレビをつけて何となくニュースを流しながら、コーヒーを飲んでいたら。
織田が起きてきた。
「おはよー、高瀬」
「ん、おはよ」
なんかちょっと、気まずそうな感じで歩いてくると思ったら。
「……あのさ、前も言ったんだけどさ。高瀬が起きたら、起こしてほしいんだけど。自分で起きればいいんだけど、高瀬んち来るのって結構飲んだ次の日だから、なんか起きれなくて……」
そんな風に言ってきた。
「でもすげースヤスヤ寝てたから」
可愛くて、起こせなかったんだけど。
心の中で続けてると。
「……いやいや、起こして?」
「あんなに気持ちよさそうに寝てんのに起こせないし。……いいじゃん、休みなんだし。ていうか、今まだ7時だし」
「……でも高瀬と一緒に起きたい」
むー、と困った顔をしているのを見てると。
可愛くて、笑ってしまう。
「……ん、分かった、今度から起こす」
クスクス笑って言うと、やっと、にこ、と笑って、「顔洗ってくるね」と消えていった。
ハムと卵を焼いて、パンをトースターに入れて。
コーヒーを織田の分も入れて。コンソメスープの分をお湯を沸かす。
レタスだけちぎって洗って、焼けたものと全部一緒に皿にのせて、ほぼ完成。スープにお湯を入れてると、 織田が着替えてやってきた。
「え、魔法?? 今の間に作ったの??」
びっくりしてる織田に、笑ってしまいながら。
食べよ、とテーブルにつくと。
「いただきまーす」
ご機嫌。ちなみに、服は、良く泊まるようになってから、少し置いとけば、と言って持ってこさせた、織田のもの。
そんだけ、織田のものが、うちに結構増えてきたって事で。
「織田、今日どうしたい?」
「んー? オレ、なんでもいい。高瀬がしたい事は?」
「オレもなんでもいいな……」
織田が居るなら、別に何してても楽しいし。
「じゃあ、午前中は家でなんか映画でも見る?」
「うん。いーよ」
「お昼から外に食べに行ったりする?」
「うん、する」
「映画、どんなの見たい?」
「んー。夏だから…… やっぱりホラーかな」
「ふーん。……織田、平気なの?」
なんか意外。
「え、苦手だよ?」
ああ、やっぱり……。
ぷ、と笑ってしまう。
「じゃあやめとけば?」
「でも、毎年絶対、何か見てるんだよ」
「映画館で?」
「ううん、家で。 ていうか、映画館でホラー映画とか、絶対無理」
ぶるぶる首を振ってる
「音でかいじゃん? オレは家で、最大限に音を小さくして、離れて見るから」
「……それ怖いの?」
最大限に小さくして離れてって、おかしくねえ? 怖くないじゃん。
クスクス笑ってしまうと、織田は、まだプルプルと首を振った。
「いいの、怖いの見ると、あー、夏だなーって、思うから。とりあえず何となく、日本の怖い映画1本は見てる」
「ふーん……」
織田より一足先に早く食べ終わって、オレはスマホで調べ出した。
「……これ、見る?」
「――――……うえー……? すごい怖そう……別のは?」
「んー…… これは?」
「んんんー…… 他の……」
「じゃあ――――…………これは?」
「――――……え、高瀬、何でそんなすごい怖そうなのばっかり選ぶの?」
もう、心底困った顔をしてるのを見て、吹き出してしまう。
「これ、そんなに怖くねえってレビューだし」
「嘘だよ、絶対怖い奴だし」
「だって織田、怖いの見て夏を感じるとか言ったよな? 怖くないホラー見てどーすんの?」
クックッと笑ってしまいながら、次のを見せるけど。
「もう、食べたらオレが探すから、高瀬見なくていいから」
首を振りながら、織田はコーヒーを飲んでる。
「もう、お前が選ぶホラー映画が楽しみすぎるんだけど」
笑いながら言うと。
「高瀬は、怖いの苦手じゃないの?」
「オレは――――……全然平気なんだよなー……」
「えー……」
多分織田って、共感が半端ないからじゃないかな。もう、実際自分が出てるみたいに感じてそう。オレは、ものすごい外側から見てるから、へー、そうくるか、位にしか思わないっつーか……。
「高瀬って、苦手なものないの?」
「苦手なもの? どーだろ……何だろ」
苦手、ねえ……?
何だろなあ。
じー、と見てくる織田に、苦笑い。
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