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「あ! ゴキブリ嫌いとか」 「……好きじゃないけど」  ……好きな奴居んの? 「倒せないとか!」 「倒せるよ」 「……虫が嫌いとか」 「好きじゃねーけど……虫怖いとかはない」 「実は泳げないとか」 「泳げる」 「音痴とか」 「言われた事ないけど」 「運動できないとか」 「……出来なそう?」 「いや、出来そう。……足遅いとか」 「遅そう?」 「ううん。速そう……」  うーんうーんと、織田が考えてる。 「食べ物好き嫌い多いとか……あ、好き嫌いは、ないんだっけ。んー……えー……?」  織田がマジマジとオレを見つめてくる。 「ん?」 「何かカッコいいとこしか無いっておかしいでしょ?」  そんな風に言って、何やら膨らんでいる。 「何かあるでしょ、できない事」 「あると思うけど――――…… 今織田が言ったやつは出来るってだけで……」  苦笑い。  できない事かー……。ぱっと思いつかない。  ……適当に器用で、一通り普通には出来てしまうとか言ったら、すげえ膨らみそうだし。  できない事って何だろ……。 「あ」 「ん? 何かあった?」 「ああ。――――……オレ、圧倒的に織田より出来ない事ある」 「うん、何々??」  ……すげえ楽しそう。 「……周り、和ませること」 「――――……へ?」 「織田の近くに居ると、和むから」 「…………? 和む?」 「ん」  呆けてる織田が、なんか可愛くて、くす、と笑ってしまう。   「それって、良い意味?」 「当たり前。人に好かれるとか、そーいう事だよ」 「……ふーん……?」  オレがそう言うと、織田は、嬉しそうに、にっこり笑った。 「良く分かんないけど――――…… なんか嬉しいからいいや」  その後すぐに、ごちそうさま、と言って、織田が立ち上がる。 「オレ片づけるー」 「いいよ、一緒にやろ」 「でも作ってもらったから、オレやる」  やる気満々でスポンジを持ってるので、ふ、と笑ってしまう。 「じゃあ、オレはコーヒー淹れ直す。怖いの見ながら飲む?」 「うん……って、え。すぐ怖いの見るの?」 「え。見ないの?」 「心の準備が……」 「でも土曜だし、昼早く食べに出るなら早く見た方が良くないか?」 「……うん」 「織田が嫌なら、そもそもオレは見なくてもいいんだけど? とりあえずコーヒーは淹れとく」  クスクス笑いながら言うと、織田は食器を洗いながら、しばらくうーんと唸ってて。  それから、あは、と笑った。 「昼間だし、楽しいの見よう? 怖いのは、今度、夜見よー?」 「夜だと余計怖いんじゃねえの?」 「……適度なの選ぶから、大丈夫」 「……分かった」  笑ってしまいながら頷いて、コーヒーの準備をしながら、織田と話す。  ――――……1人なら、朝作るものは一緒だけど、黙って食べて、コーヒー飲んで、自分のペースで、ただゆっくりして。  前はそっちのが好きだったんだけど。  ――――……何だかなー……。  この出逢いが運命かなって思ってしまう位、心が、緩むっていうか。  ――――……反応全部が、愛しいというか。  もしこれが女だったら。  結婚、てものを、初めてしたいと、思ったかも、しれない。  ……別に、男のままでも、オレは良いけど。  ていうか。 「なー、高瀬ー、オレさあ、夏っぽいことしたいなー」 「何? 夏っぽいことって」 「うーん、よく分かんないけど。 ビアガーデンとか思ったんだけど、昨日も飲んだしなー……何がいいかなあ」    ――――……お前、もっと、オレの事好きになんないかな。  ずっと、オレの事が好きって。なんねーかな……。  今のままの、織田で、ずっと側に居てくれたら、いいのに。  楽しそうな織田を見ながら、そう思ってしまう。

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