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「かせ? …高瀬??」 「……え?」 「わー、珍しい。高瀬がぼーとしてんの。聞こえてなかった? 呼んでたの」 「あ、悪い――――……」 「全然。オレよくあるし」 「今何て言ってた?」 「オレ、カフェオレがいいなあって言ってた」  食器を洗い終えた織田が、隣に並んで、オレを見上げてくる。 「ん、いいよ」  ――――……このまま。  嬉しそうに笑ってる、すぐ近くに居る織田に触れて……キスしたら。  どうなるんだろう。  今の織田は、オレを好きだと思うけど。  キスしたら――――……引かれるのかな……。 「高瀬?」 「――――……」 「あれ? 高瀬??」 「……あ、うん。 何?」 「どしたの?……なんか悩みでもある??」 「――――……無いよ、ごめん、ちょっとぼーとしてただけ」 「……悩んでるなら、オレでよければ聞くからね」 「――――……ん、ありがと」 「ほんとに、聞くよ?」  じっと、見つめてくる。  ――――……いつも近くで見つめあうと照れるのに。  多分、本気で心配してるから、そっちに気が回ってないんだろうな……。  はは。ほんと――――…… いい奴な、織田。  きっと誰の事でも、本気で心配する。   「高瀬? ほんとにどうし――――……」 「織田」 「うん?」 「少し――――……縋ってもいい?」 「縋る?? どういう意味? てか、うん、良い、よ?」  意味、分からなかったみたいだけど、いいよ、と言ってくれたのを良い事に。その肩に触れて。ぎゅ、と抱き締めてみた。 「え」  織田の顔は、ちょうどオレの肩くらいの所にあって。  顔、見られないように、両腕で軽く、抱き付く感じ。 「た、かせ??」 「――――……ちょっとだけこのままでいい……?」 「――――……」  何も、返事、しない。  やめた方がいいかな、と思って、離れようと手を解こうとした瞬間。  織田が、背中にぎゅ、と腕を回してきた。わざわざ離れて腕を回してたのに、ぎゅ、と密着されて、焦る。けど、織田がすぐ、一生懸命な感じで話し出して。オレは、動けなくなった。 「っ……良く分かんないけど――――……高瀬が落ち着くなら、いいよ。気が済むまでこうしてるから」 「――――……」 「……話も、聞くよ? ――――……オレ、ずーっと。高瀬に助けてもらってるし……一緒に居れて、楽しい、し……感謝してるし」 「――――……」 「だから、高瀬が困ってるなら、絶対助けるから」  織田の抱き付いてるのには、多分今は、何の意味もない。  何かオレが情緒不安定にでもなってて、人肌みたいなの求めてるとでも思ってるんだろうと思う。……好きで、とか。そんなんだとは思ってないから、なんか、すごい一生懸命な顔して、言ってるし。  普段なら、近寄っただけでも照れるのに、今は、違う顔してる。  ――――……はは。……もーほんと……可愛いなー。  織田をぎゅ、と抱き締めて。  しばらくそのまま。  ゆっくりと、手を離すと、織田もゆっくり、腕を解く。 「ありがと。――――……もう、大丈夫」 「……ほんとに?」 「うん。完全に復活した」 「――――……」  黙ったままオレを見つめて。  そして、織田はちょっと困ったような顔。 「高瀬が困ってるなら、ほんとになんでも、聞くから」 「ん。なんか……その気持ちだけで、元気んなった」 「……なら、良かった…………っ」  少しほっとしたように言いながら、織田、急に、真っ赤になった。 「ていうか――――…… 今の、めゃくちゃ恥ずかし……って今更だけど……っ」  ボボボ、と真っ赤になっていく織田に、ぷ、と笑ってしまう。 「つか笑うの無し! だって、恥ずかしいじゃん……っ」 「――――……嫌じゃ、ねえの?」 「……っっ嫌だったら嫌って言ってるし」 「――――……でもさ」 「オレ、高瀬がする事で、嫌だって思った事、いっこも無いけど……っ っでも今のは、ちょっと、恥ずかしかった……」  ちょっとじゃないかも……とか、ブツブツ言いながら、熱くなってる頬に、手の甲を当てて冷やしてる。  ……本当にオレ、お前が好きみたい。  抱き締めて、余計に思ってしまった。  抱き締めたら違うと思うかな、とも思ったのだけれど。  好きなの、さらに自覚しただけだった。    参ったなあ……。  やっと熱が引いてきたらしい織田の頬に、そっと触れてみた。 「え」  ポカン、と口を開けた織田が、また、一気に赤くなった。 「まだあっついな?」 「っっっ! 高瀬が恥ずかしい触り方したから、ますますじゃんっっ」  もうもうもう!!!  そんな感じで怒ってるけど。  可愛くて。  ふ、と笑って見つめてると、さらに照れていく織田に。  なんか益々触れたくなって。やばいなあ…と、思った。  

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