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「……すごい、なんか特別な感じがする」 「ん?」 「2人で浴衣、とか。 いつもと違うじゃん?」 「ん。そうだな」 「楽しーな?」  言葉通りものすごく楽しそうに、フワフワ笑いながら、見上げてくる織田に。そうだな、と頷きながら。  お前と居ると、今までしなかった事や、好きじゃなかった事までが、楽しすぎて。  ――――……ほんと、やばい。  これで、織田に彼女出来たりして、織田がオレと居なくなったら。  オレ、どうすんのかな?  お前って、いつまで、オレを好きなんだろ。  どこで、吹っ切る、つもりなんだろ。    オレはその時――――……吹っ切れるかな。 「高瀬」 「――――……ん?」 「まだちょっと、考えてること、ある?」  じっと見つめてくる織田の、まっすぐな、瞳。  ほんと。……すぐバレるな。  ほんの少し、黙ってるだけなのに。 「オレさ、高瀬の事さ」 「……?」 「今まで知り合った奴の中で、一番――――……大事だからさ」 「――――……」 「……1人で辛いなら、オレで良かったら、なんでも聞くから。秘密厳守するし。どんな事でも、ちゃんと聞くから」 「――――……」  ――――……つか。  何なの。お前。ほんとに……。 「――――……じゃあさ」 「……ん?」 「ずっと、オレと、居てくれる?」 「――――……」  一瞬、きょとん、とした顔をして。  それから、ものすごく、じー、とオレを見つめて。 「高瀬が良いなら、ずっと居るよ?」  クスクス笑いながら、織田が言う。 「じゃあずっとだけど」 「うん。いいよ」  即答してくるし。  そういや、織田って、きっと、分かってないよな、オレが好きな事。  織田が、オレを想うより、もっと、やばい位、好きな事。  何だか色々思う所はあるのだけれど。  一生懸命な顔でそんな事言ってくれる織田が。  何か、どうしても可愛くて。 「じゃあ、考えといて。オレとずっと居れるか」 「……? うん。居れるよ?」 「……ちゃんと考えといて」 「――――……??」  不思議そうな顔をしながらも、わかった、と頷く。  ふ、と笑ってしまう。  ほんと。可愛いな、お前。 「なあ、織田、あそこ。見える? 神社ののぼり。赤い旗」  気持ちを切り替えるために、わざと明るくそう言った。  え? と顔を上げた織田は、見つけた途端に笑顔になった。 「見える。浴衣の子も多くなってきたね」  まわりの人たちを見て、織田がそう言ってから。  ふと、見上げてくる。 「でもやっぱ、高瀬は目立つ」  クスクス笑って、織田が言う。 「男2人で浴衣着てるからじゃねえ?」 「え。着ない?」 「オレ初だけど着るの」 「オレ結構地元の祭り、浴衣着せられてたから、抵抗無くて。高校とか大学ん時も母さんが用意するから、着てたんだよね」 「友達も?」 「うん、皆で着ようーて言ってさ」 「オレの友達誰も着なかった」 「あー。あれだね、誰か言い出さないと着ないのかもね。確かにそう言われてみると、周りの男はあんまり着てなかったかも」  そんな風に言って、織田が笑う。 「結構、皆で浴衣着るから、目立つとかもあんま考えなくて着てたなー女の子は皆着てくるしさ。男も皆で着ようっとて各自用意して……よく考えたら皆買いに行ってたのかな。オレ、自分で買ったの初めて」 「オレ、多分浴衣は初めて。 子供ん時、甚平着させられてたのは写真で見たけど」 「……無理に着せちゃった?」 「んなこと無いよ。……なんか、引き締まるっつーか。気分いい」  即答すると、嬉しそうに笑う。 「良かった」 「あ、織田」 「ん?」 「神社で買うもんは、オレが払う」 「ん??」 「浴衣買ってもらったから」 「えー。お世話になってるからなのに」 「別にオレ、お世話してるつもりねえし。 楽しいから居るだけ」 「――――……」  きょとん、として。  その後、照れたように、でも嬉しそうに、ふわっと笑って。 「じゃあ――――……買ってもらお、かな」 「ん。何でもいーぞ。全部制覇する?」 「げげ。無理。ていうか、昼ご飯食べてそんな経ってない気もするね。ゆっくり回って、夕飯、祭りで食べる?」 「いーよ」 「祭りで飲むビールって、美味しーよねー」  話しながら、神社に近づくにつれ、交通整理をしている人が居て、車が通行止めになっていた。人はかなり多いけど、神社が広いし、車道も歩けるようになってるし、まだ早い時間だからか、そこまで混んでる印象も無い。 「暑いからかき氷食べたい」 「いーよ。ていうかかき氷の店が何個もあんな……」 「どこがいいか選ぼ―?」  楽しそうにキョロキョロしだす。  そう言えば。今気づいたけど。 オレ、祭り。あんま好きじゃなかったっけ。暑いし。人込み嫌いだし。過去何回か、誘われて付き合いで行った記憶はあるけど、特別好きでもなかった。  ――――……楽しそうな織田と居ると。  ワクワクするというか。  織田と居ると、何でか急に、好きになるもの。 なんかまた、増えた気がする。  浴衣と祭り。  子供でもねえのに、今さら。と思いながらも。  何でか、自然と、笑んでしまう自分が、本当に不思議。  

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