56 / 234

◇大好き*圭1

 やっぱり、オレ、高瀬が好きだ。  ずっと考えてたのは、  ほんとに、付き合ったりできるのか、というよりは。  ……付き合って…… すぐ別れるとかなったら、立ち直れるのか。  オレが、心配なのは――――…… もしかしたら、そっちだったかも……。  ただ片思いなら、傷もつかずに、やりすごせるのに。  ――――……一度、高いハードル越えて、  高瀬にまっすぐ向かって。  それでダメになったらどうしよ。友達にも戻れないだろうし。  そう思うと、怖くて、踏み出せなかった。  女の子に告白されて付き合う時なんか、そんな事は考えなかったのに。  好きになれたらずっと付き合えばいいし。  好きになれなかったら、別れればいいし。  告白を受ける時なんて、その程度の事しか考えなかった。  ――――……高瀬と、付き合うのって……。    男って事はもちろん、  こんなに、好きになったのが、多分、うまれて初めてで。  こんなに、1人の人間に、心の中、振り回される事も、初めてで。  付き合う、に踏み込む勇気が、出ない、だけなのかもしれない。  男同士で、ていうくくりに入る事も。  ……やっぱり結構、難関な事で。  その難関な壁を飛び越えて、飛び込んで……。  ――――……ダメだったら、オレ、戻れるのかな……。  ――――……色々考えてると、  ……やっぱり、怖い。  高瀬の事は大好きで、一緒に居たくて。  あの夜、キスもセックスも、意味わかんないくらい、気持ち、よくて。  つながった瞬間で死ねるんだったら……もうそこで全然飛び込めるけど……。  ……その先ずっと、一緒に居られるか……。  考えても仕方のない事、考えてる。のは分かってたけど、全然答え、出なかった。  だけど――――……。  無理という結論で、高瀬を拒否したら……友達にはきっと戻れなくて。  今週、ずっと高瀬と居られなくて、寂しかったのより、きっともっと離れる事になって……。きっと仕事だけのつながりに、なって……。  切なくて、死にそうに、なる。  胸の奥が、痛くて、涙腺に響いてくる。  まだ結論が出ない内に、オレは、高瀬のマンションに到着してしまった。  一瞬ためらいながらも、このままで居る訳にはいかないと心を決めて。  チャイムを慣らして、少し待つ。 「はい。……あれ、織田?」 「うん、あの……」 「あがってきて」  すぐ聞こえた高瀬の声。開いた自動ドアを通り抜け、エレベーターに乗り込んだ。高瀬の部屋の前で、再度チャイムを鳴らす。 「織田」  すぐにドアが開いて、迎え入れてくれる。 「高瀬……―――……」  白のセーターにジーンズ。  やっぱりすごくカッコ良くて、こんな時なのに、一瞬見惚れてしまう。  目の前に立っているだけで、もう心臓が飛び出そなくらい、  ドキドキして。  ああ、もうなんか――――……  ――――……どうしたって、好き、なんだな。オレ。  なんだか、突然。  ――――……心が決まって。  とにかく、全部、ちゃんと話そう。  そう、思った。

ともだちにシェアしよう!