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◇大好き*圭2

「とりあえず、入って」  そう言ってくれた高瀬を見上げる。 「――――……あの 高瀬」  呼びかけると、高瀬はオレをまっすぐに見つめた。 「何?」  高瀬の視線に、言葉を飲み込んでしまう。  でも、先に、最悪だったオレの態度の事だけでも先に謝ろうと、なんとか口を開いた。 「……いっぱい避けて、ほんとにごめんね」 「――――……」 「最初は恥ずかしくて、高瀬とちゃんと話せなくて。なんか……避けてたらどんどんおかしくなって――――……嫌な思いさせてごめん……」 「――――……」  高瀬は、ふ、と息を吐いて。  前髪を掻き上げて、そのまま。すこし眉を寄せて、口を開いた。 「いいよ。――――……織田が混乱してたのは分かってたし。それにオレも反省するとこ、あるし」 「……反省?」 「――――……織田、酔ってるの分かってたのに、告白したその日に、最後まで進んじゃうとか。 付き合ってって言うのが、後になった事とかさ」 「でもそれは、オレが良いって、言ったし」 「それでもね。酔ってたのも分かってたし。……だから、シラフに戻った織田が混乱してるのも、分かったし。ほんとはそれも、オレがごめんて感じなんだよ。何も、謝らなくていいよ」 「……でも……」 「いいからさ。とりあえず、あがって?」 「……ん」  カバンを玄関の隅に置かせてもらって、中にあがる。 「――――……手洗ってくるね」 「ん。なんか飲むか?」 「……お水、もらえる?」 「わかった」  洗面台で手を洗って。  自分の顔を鏡で見つめる。  ぱんぱん、と顔をたたいて、気合を入れる。  しっかりしろ、オレ。  いくらかまともになった顔を見て、息をつく。  リビングに入ると、すぐに高瀬が水の入ったコップを渡してくれた。 「ありがと」 「結構飲んだ?」 「ううん。1杯飲んだだけ」  飲んだコップをテーブルに置きながら、高瀬を見つめる。  あぁ。なんか。――――……ずっと、顔見れなかったから。  …………見れて嬉しい。とか。すっごく思っちゃうな。 「電話するって言ってなかった?」 「……高瀬に会いたくなって。……顔見て話したかったから」 「――――……」  一瞬黙って。それから。高瀬、苦笑い。 「……何でそんな可愛いかな……」  ふ、と笑われて、カッと顔が熱くなる。 「じゃあ、ちゃんと話そうか――――…… あ、上着貸して?」 「あ……うん、ありがと」  脱いで手渡した上着を、高瀬がハンガーにかけてくれるのを見ながら、オレはテーブルの椅子に腰かけた。  すぐに、向かい合わせで、高瀬も目の前に座る。  先に口を開いたのは、高瀬だった。 「何を話そうと思ってる?」 「……あの……あの日オレが言った事は、全部、ほんとで」 「うん?」  高瀬が語尾をあげて問いかけるように、微笑する。 「……ずっと好きだったし……止めないでって、思ったのも、全部、本気で……ただ、シラフだったら言えなかったような事、酔った勢いで、全部ばらして――――…… だから、もう、恥ずかしくて……なんかもうどうしたらいいか分からなくなって…… 避けて、ごめんね」  何か、言ってると居たたまれれなくなってきて、落ち込みながら謝る。 「……でも……オレ 嫌だから避けてた訳じゃなくて……」 「――――……」  高瀬の顔を見ながら、言葉に出して言っていたら。  なんだか、突然、覚悟が決まった。   「高瀬、あの――……オレ……今酔ってないから。今まで思ってた事、全部ちゃんと言うから。聞いてて」 「――……ん」  頷いてくれたので、オレは一度息を吸って。  まっすぐ、高瀬を、見つめた。  「オレ、高瀬の事が好き。会った時から、好きだった。ほんと……入社式から」  高瀬は何も言わず。ただ、少し、頷いて。見つめ返してくれる。 「……だけど、オレ、恋人になりたいとかは全然思ってなくて。男同士だし…… 高瀬がオレをそういう風に見るなんて、絶対ないと思ってたし……」 「――――……」 「……だから、自然と忘れるまで……少しの間、自分の中だけで、好きでいる位、いいかなあと思ってたんだ」 「――――……ん」 「……そんなだったから……オレ……あんなふうに、なって……どうしていいかわからなくて。……高瀬がどうしてオレに付き合おうて言ってくれたかもわからなくて」 「――――……ん」 「高瀬、カッコいいし、仕事出来るし、優しいし、絶対モテるし……」 「ちょっと待って……」  ぷ、と高瀬が笑う。 「ん??」 「なんか、ほめ過ぎ」  クスクス笑う高瀬。 「だってそうなんだもん……だからさ、付き合ってからの事もさ、別れることになった時の事まで考えて、それも悩んでて……」  どんどん、俯いていく自分に気付いて。  まっすぐ、高瀬に視線を戻す。  優しい、高瀬の瞳。  目が合うと、ふ、と微笑まれて、どき、とする。  さっきまでどうしていいか分からなかったのに。  こうして高瀬を前にして、話していると。  もう、自分の言いたい事は、1つしかない、と思えた。 「やっぱり、オレ、どうしても高瀬が好きで、近くに居たいから」 「――――……」 「……だから……オレと――――……付き合って、ください」  まっすぐ、見つめてそう言ったら。  少しの沈黙のあと。  高瀬は、ふ、と笑った。 「――――……オレから、付き合ってって言ってあるのに」 「え?」 「お前は、OKくれたらいいのに。付き合ってほしい、なんて改めて言ってくれるんだな」  そう言うと、高瀬は、ふ、と笑って、オレをまっすぐ見つめてくる。 

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