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◇高瀬の気持ち*圭1

  「織田が入社式の時、ぼーっと見つめてくるとこ。なんか最初から可愛かったんだよね」 「……あのさ」 「ん?」 「――――……オレ、そんなにバレバレ、だった?」 「……まあ。 自惚れとか疑いもしない位。分かりやすい感じ」 「……っ恥ずかしすぎるんだけど……」  織田が顔を赤くして、額を隠してる。 「その後も偶然研修、一緒だったけど…… オレをまっすぐ見てくるとことか、近寄ってくるとことか、全部可愛くて」  言いながら、ふ、と笑ってしまう。 「だから、オレ最初からお前の事可愛かった訳。でも、もちろん最初は、男だしって、思ってたんだけど――――……でもオレ、お前が一緒だったから、仕事も頑張ってたし……」 「……? 何それ?」 「ほんとはダルイって思ってたんだ、仕事とか、色々全部。――――……新入社員代表になりはしたけど、でもあれも、ただ指名されただけで望んだ訳でもなかったし。 ……多分、入社当時のオレって、やる気とか皆無だったの」 「……? でも そんな事なかった、けど……?」  ずっと一緒に居たけど、そんな事、全然なかったし、それどころか誰よりも、前向きで、仕事もデキて。 「――――…… 織田、ずっと側に居ただろ? 入社式ん時から、研修も一緒で、席まで隣で同じチームで」 「うん……?」 「お前に良いとこ見せたいなってのが、頑張った一番の理由」 「……うそ……?」  言うと、高瀬は「何で嘘なんだよ」と、笑ってる。 「嘘じゃないよ。 全部ほんと。まあ今は―――……結構仕事も楽しんでるけど、な。 最初はほんと、お前のおかげ」 「高瀬……」 「オレもさ――――……男同士って葛藤もあったし、絶対織田は誰にも言わず、その内なかった事にする気だろうなって、思ってたし……」 「――――……」 「……結婚願望とか子供とか、そういうのも聞いてたし。 だから、オレも、諦めようと思ってたんだけど――――……」 「――――……」 「やっぱり諦められないって思って……やっとの事で好きって言った訳」 「――――……」 「だからオレ、本当に本気で、ずっと、お前の事が好きなんだよ」  めちゃくちゃはっきりそう言ってくれて。  そんなに、最初から。オレの好きなのがバレてて、それでも、オレを好きって思ってくれて。 それで、今までずっと、一緒に居てくれたんだ、と思ったら。嬉しくて。 「ただ、月曜から避けられてた時は……もしかしたら、好きなのは好きだけど、やっぱり男とはそうなりたくはなかったのかとも思ったけど……」 「違うよ、そんなんじゃなくて……」  慌てて言うと、高瀬は、ふ、と笑んで、頷いた。 「大丈夫。もうさっき話してくれたので分かったから」 「――――……」 「結論が、オレと付き合ってくれるってなるなら、もうそれでいい」  言った高瀬が、オレの頬に、触れて。  それから、ゆっくり、キスしてくれる。  すぐに離れた、高瀬の瞳と、見つめあう。  何かもう。何も言葉にならない。

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