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◇修行中✳︎拓哉 1

 ――――…… ヤバいな。オレ。  織田と、付き合う事になって。  朝、一緒に会社に来た。  仕事途中で、ふと気付いた。  ――――……オレ、浮かれすぎ。  織田は分かりやすくて、すぐ赤くなるし、何かぼーとしてて。  見るからにいつもより、ぽわぽわ浮かれてる。  けど。  オレは分かりにくいから、周りにも織田にも、バレてないと思うけど。  絶対、オレのが、ヤバい。  さっき、トイレで、キスしてしまった。  人が居ない事、来てない事は確認はしたけど。  人が来るかもしれないところで、我慢できずに、キスしてしまった事なんか、人生で初めて。  ――――……ヤバいよな。  気を引き締めないと、鼻歌を歌いながら仕事をしてしまいそうな。 「――――……なあ、高瀬」 「はい」    渡先輩に声を掛けられ、そちらを振り返る。  ――――……多分、大丈夫。  いつも通りで、過ごせてるはず。 「さっきの打ち合わせ、平気だった?」 「とりあえず、分からない事は無かったと思います」  なるべく平静を装って、先輩の質問に答える。 「じゃこれからのスケジュール、ちゃんと組んでくけど……他の仕事の予定も考慮して、一旦組んでみる?織田とも相談してやってみて」 「分かりました。とりあえず織田とスケジュールあわせて、先輩たちに見てもらう感じでいいですか?」 「ん、それでいいよ」  話し終えてすぐ、オレは、逆隣の織田に体を向けた。  向こう側の太一先輩と話していた織田は、なんとなく気配を察したのか、ふ、とオレを振り返った。 「織田、さっきの打ち合わせの仕事、2人で相談してスケジュール組んでみてだって」 「あ、うん。今太一先輩も言ってた」 「今お前は急ぎの仕事ある?」 「うん、いっこ…… ちょっと待って」  言いながらスケジュール表を机に出してくる。 「この仕事が優先だけど…… でももうある程度は進んでるから……」  1枚の紙を真ん中に、織田がシャーペンでなぞる箇所を、オレがひょい、とのぞき込んだ瞬間。 ぴた、と織田が止まった。 「……――――……っ……」  会話が急に中断されて。不思議に思って顔を上げたら。  織田が手で口を覆って、俯いていた。 「……っごめん……」  何を考えたんだか、耳まで真っ赤。 「――――……」  んとに――――……ヤバいって、言ってんのに。  キスしたい。  触れたい。 「――――……ごめん……」  織田は謝りながら、手で顔をパタパタ仰いでる。  ……ほんとだよ。  ただでさえヤバいっつーのに、何で織田、そんなに可愛いかな……。  ヤバい。  マジで、キスしたい。 「……だから、とりあえず、この仕事はあるけど……でも、大丈夫だから…… 合わせよ」 「……ん」  織田みたいに、赤くなったりはならないけど――――……。  可愛くて、しょうがない、と思うのを、止められない。  こうなると、同じチームの、席が隣同士って、かなり、きつい。  近づいたり、見つめたりする時の、  ――――……織田の反応も、いちいち可愛くて。  なんだろ、オレ。  ――――……こんなに触りたいと思うの、初めてじゃねーかな……。  本当、ヤバいなー……。  隣に居る織田に触れるのを、我慢するの。  ……修行でもしてる気がする。

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