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◇一緒に出社*圭3
「織田何が食べたい?」
「んー……今ぱっと浮かばないから、なんでもいいなー。高瀬が食べたい物あるならそれでいいよ?」
「オレもパッと浮かばないな」
「じゃあ帰りまでに考えよう?」
「ん。なあ、織田」
「うん?」
改めて呼ばれて振り返ると。
高瀬がめっちゃ近い。
「な、に??」
「――――……今日、泊まりに来る?」
とっさに、行きたい、と思ってしまうオレって……。
「行きたいんだけど……でも、スーツとかシャツとかあるし……家に帰んないと」
「まあそっか。金曜から帰ってないもんな」
「ん、ごめんね?」
「いいよ、しょうがない」
くす、と笑われる。
そのまま、ぐい、と肩に手をかけられて、引き寄せられて固まっていると。
「でも――――……織田抱きしめて寝れないのは、さみしーな」
そんな風に言う高瀬に、ちゅ、とキスされた。
「…………っ」
破壊力抜群のキスとセリフに、もう眩暈がしそうな感覚に陥ったその時、急に、高瀬がぱっと離れた。その瞬間、ドアが開いて、太一が入ってきた。
「お疲れさまでした」
高瀬が一歩前に出て、不自然じゃない形で、一瞬オレを後ろに隠して、開いたドアを支えた。
「おうおつかれ。あ、織田、さっきの打ち合わせ、大丈夫だった? わかんねえ事なかった?」
「……あ、とで、聞きたい事あります」
「OK、ちょっとコーヒー飲んでから戻るなー」
「わかりました」
まだ、通常モードじゃない頭で、なんとか答える。
「織田、行こ」
言いながら、高瀬がドアを開けてくれてる。2人でトイレを出て、廊下を並んで歩く。小声で聞いてみた。
「――――……高瀬、人が来るか、見てた?」
「小窓に人影うつるから、そこは見てたよ」
「……急にトイレでするからびっくりしてたんだけど」
「会社でバレるようになんてしないから。 ずっとちゃんと居れるように、うまくやってこうな?」
「うん」
こそこそと、そんな風に、言ってくれると。
やっぱり、大好きだなーなんて思って。
――――…… 何でこんなに、カッコよくて優しいんだろ。
仕事できるし。
……高瀬のできないことって、何???
なんか前にも聞いた事もあるような。
でもそん時も無かったような。
……高瀬って。
なんかずるいなー。
「織田?」
じっと見上げていると、くす、と笑われて。
見つめ返される。
どき。
……もう、会って何カ月も経つのに、
見つめ返されるだけで、ドキドキしちゃうとか、
ほんと、無いよね、そろそろ見慣れないかな、オレ。
……まだまだ見慣れなそう。
んー。ほんとは今夜も泊りに行きたい。
……ずーと、一緒に居たいけど。
――――……でもなあ。スーツ、金曜と月曜は間空いてるから良かったけど、今日と明日同じスーツはなー……やだもんなあ。
しょうがない。
「高瀬、仕事、頑張ろう?」
「ん? どした?」
「なるべく早めに終わらせて、ゆっくりごはん、食べにいこ?」
「……ん。そだな」
クスクス笑われて、また目が緩む。
これだよねー。
ただ見られるだけでもドキドキするのに、 優しい顔するから。
もー。ほんと。
大好き。としか思えない。
仕事頑張ろう。
高瀬と早くご飯行くために。
不純な動機で超やる気になってるオレを見て、
高瀬が面白そうに、クスクス笑ってた。
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