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◇やっと1日終了*圭 1

 定時を伝える音楽が流れる。  終わった。  とりあえず、やっと、定時までは仕事終わった。  1日、朝から、ていうか、昼もトイレで……色々強烈で。  お昼から帰ってからは、なるべく高瀬側を向かないように、太一先輩と仕事を頑張った。途中からは高瀬が、渡先輩達とのミーティングで席を外していてくれたので、先週ダメすぎて、完全に遅れていた仕事も、だいぶ捗った。  それにしても。  この1日、濃密すぎて、もう、ほんとに死にそうだった……。  定時までの4時間。  ――――……午後は、ちゃんと仕事した。  でも、なんか、疲れたよー――――……。 「あれ、織田が倒れてる……」  机に突っ伏して体に込めすぎた力を抜いていると、太一先輩がおかしそうに笑いながら、そう言った。 「……今日、ちょっと、疲れて……」 「はは。 だいぶ進んだし、今日は定時であがれば?」 「……はい……」  あーでも……打ち合わせに行った高瀬がまだ帰ってこないんだよ……。  ご飯食べに行くのに。 「ほんと。お前、大丈夫?」  ぷぷぷ。  太一先輩が面白そうに笑ってる気配。 「……あれ、織田?」  どきん。  うしろからかけられた、大好きな声に、頑張って起き上がる。 「何倒れてンの?」  クスクス笑われて。「大丈夫」と言うと。  高瀬に、ぽんぽん、と背中を叩かれた。 「大丈夫じゃないんだよ、さっき定時の音楽が鳴った時から、この状態」  太一先輩が、そんな余計なコトを高瀬に伝えてる。  高瀬は、ふ、とおかしそうに笑って。 「疲れた?」 「ううん、平気。打ち合わせ、無事終了?」 「ん、終了」 「残業は? しそう?」  そう聞くと、高瀬は渡先輩の方を向いて、残業していきますか?と聞いてる。  残業無しで! 先輩、無しで!  心の中で祈りながら、オレも一緒に答えを待っていると。 「高瀬はどーしたい? やっていきたい?」  そう言った。 「あー……そう、ですね……」  言いながら、高瀬は、ちら、とオレを見て。  オレの顔から何を読み取ったのか。  ぷ、と吹き出しながら。 「明日頑張るんで、今日はしなくてもいいですか?」  そう言った。 「ああ、いいよ」  渡先輩のオッケイも出たところで、オレは、さっさと自分のパソコンをシャットダウンして、机の上を片付ける。 「なんか織田、急にてきぱきしはじめたな」 「え。そ、そんなことは」  太一先輩にクスクス笑いながら突っ込まれ、あはは、と誤魔化し笑いを浮かべつつ、帰る準備だけめっちゃ早く完了。 「もう帰れる?」  高瀬にクスクス笑われて、頷くと。  高瀬が、立ち上がって、ワイシャツの上に、上着を着た。  何だかな。  ……カッコいーなー、ほんとに。  上着着るだけで、カッコいいって。  何??  と思いながら、オレも同じく上着を着て、ボタンを締める。 「じゃあ。お先に失礼します」 「お疲れさまでしたー!」  2人そろって言うと、先輩達に笑われる。 「良かったな、織田」 「え?」 「高瀬と仲直りできて」  太一先輩がクスクス笑って言うと、渡先輩も笑う。 「なんだかんだ言って、高瀬だって先週ヤバかったからな。良かったなっつーのはお互い様だよなー?」 からかうように言われて、何と返事すべきか困ってると。 「――――……ほんと、良かったです、仲直りできて」  高瀬が、そんな風に、ものすごい、まっすぐ返してる。  ますます言葉が出てこないし。  先輩達はまたクスクス笑って。 「お疲れー仲良く帰んな」 「また明日なー」  送り出されて。  2人で、歩き始める。 「――――……仲直りっつうか。別に喧嘩はしてねーけどな」  クスクス、高瀬が笑いながらオレを見つめてくる。 「織田が照れまくって、悩みまくってオレを避けてただけだもんなー?」 「――――……っっごめんね」 「いーよ。全然。今、楽しいし」  そんな風に言う高瀬に。  ……ああもう。ほんとに、大好き。  なんて、思った。      

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