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◇絵奈ちゃん*圭 6
「織田、ごめんな、相手させて」
「全然。 楽しかったよ?」
高瀬の言葉にそう返すと、絵奈ちゃんがうふふ、と笑ってる。
「絵奈、今日は何しにきたんだ?」
「相談にきたんだけど――――……織田さんに聞いてもらっちゃった」
「は?」
高瀬が怪訝そうな眼差しを絵奈ちゃんに向け、その後、眉を顰めつつオレを見る。
「うん。恋愛相談、聞いちゃった」
あはは、と笑ったオレと、うふふ、と笑ってる絵奈ちゃんを目に映して。
はー、とため息。
「初対面の相手に、何で恋愛相談してんだ……」
「でも織田さん、すごいちゃんと聞いてくれるし、優しいし。もう、お兄ちゃんに相談する事、無くなっちゃった」
「ん? じゃあもうオレは聞かなくてもいいのか?」
「うん。今日はもういい。帰るね」
「お前ほんとに何しに来たんだ……」
高瀬が苦笑いしながら、絵奈ちゃんに言ってる。
「だから相談に来たんだってば。でも織田さんと話せたから、もういいの」
絵奈ちゃんはバックを肩にかけて、オレに向き直った。
「織田さん、ありがとうこざいました。楽しかった。またお話させてくださいね」
「うん。オレも楽しかったよ」
「織田さんに会いたくなったら、お兄ちゃんに連絡しまーす」
「うん。そうして」
クスクス笑って頷くと、絵奈ちゃんは、リビングを出ていった。
高瀬がオレを振り返る。
「駅まで送ってくる。織田、ごめんな、ゆっくりしてて」
「あ、オレも行く? 帰りに一緒にご飯食べる? 行くならすぐ着替えてくるけど」
そう言うと、高瀬は、首を横に振った。
「いいよ、風呂入ってゆっくりしてんだし。夕飯買ってすぐ帰ってくる。ごめんな、今は早く家に帰りたかったから」
「大丈夫だよ。待ってるから」
「――――……」
よしよし、と頭を撫でられて。どき、としてしまう。
リビングを出て、玄関で靴を履き終えてる絵奈ちゃんに近付くと。
「織田さん、さよなら、また今度」
「あ、うん。絵奈ちゃんちゃん、またね」
高瀬も靴を履いて、「ほら、早く行くぞ?」と絵奈ちゃんを急かしてる。
「織田さんまたねー」
言いながら、絵奈ちゃんが先に玄関を出ていくと、高瀬が再度オレを振り返った。
「すぐ戻るから、待ってて」
「そんな、急がなくていいよ、テレビでも見てるから」
「ん」
ふ、と笑って、高瀬もドアの向こうに消えていった。
急に、静かになる。
……うーん、並んでると、美男美女。
派手な顔した、兄妹だなー。
……にしても、絵奈ちゃんが近くに居るのに、あんな優しい顔して頭撫でてくるの、やめてほしい。 ほんとにドキドキしちゃうじゃないか。もう。
高瀬は、自分がどんなにカッコいいか、一回ちゃんと分かっといて欲しいなぁ……。
そんな事を考えながら、リビングに戻る。
急に現れて、あっという間に消えていった、高瀬の妹。
思い起こすと、何だか可笑しくなって、ぷ、と笑ってしまう。
なんか、吸い込まれそうな、黒目は、似てたかも。
高瀬の可愛かった頃の話、聞きたかったな。
淳くんと うまくいくといいけど。
でも絵奈ちゃんの方が恋愛感情じゃないなら無理だしなー……。
ほんとに、また今度会えればいいな……。
なんて思いながら、とりあえず、テレビの電源を付けた。
高瀬、早く帰ってこないかなー。
早く、会いたいなー。
話したいなー。
――――……触りたい、なー……。
そんな事を思っていると、全然、テレビの内容が頭に入ってこない。ソファの上で、なんとなく膝をかかえて座ったまま。
ぼーーーー、と、高瀬の事を考えていた。
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