「織田さんも、カッコイイですよね。モテるでしょ。 　ていうか、うーん……織田さんは、可愛い、かなあ……？」 「……」 　……何でオレは、高瀬家の兄妹に、可愛い呼ばわりされてるんだろう。 　しかも、年下の女の子に。 「織田さんて、初めて話した気がしなくて不思議」 「そう……？」 　まあ。それは、わりと、よく言われる。 　オレ、高瀬みたいに、クールな見た目じゃないしな。うん。 　親しみがあるって事かな。 「ね、織田さんの彼女さんて、どんな人ですか？」 　楽しそうな笑みを浮かべて、絵奈ちゃんが乗り出してきた。 「え。　……オレの話は……えーと。　内緒って事で……」 　高瀬の妹に、そんな事話すなんて、かなり、無理がある。 　そう思って、一度断ったのだけれど。 「あたし、すっごく興味あって。　織田さんて、どんな人を選ぶんだろうって。ちょっとだけでも、良いです」 　興味深々の大きな瞳に、んー、ちょっとだけ……　と、考えて。 「――――……一目惚れで……」 「うんうん、それで？」 「――――……なんか強烈で」 「……強烈？」 「……うん」 　絵奈ちゃんの不思議そうな表情に、ふ、と笑ってしまう。 「強烈なんだよね、色々と……」 　言葉も態度も、視線すら、強烈……。 「……でも、すっごい優しくて」 「――――……」 　なんか思い出してると、自分がつい笑顔になってしまうのが分かる。 　――――……やばいなあ。オレ。 　ほんとに高瀬、大好きみたい。 「――――……いいなあ、大好きなんですね」 　にこにこ笑ってる絵奈に、ふ、と笑ってごまかす。 「……あたしも、淳と向き合ってみようかなー……」 　ぽそ、と呟く絵奈ちゃん。 「……出会ってもう何年も、ずーっと、一緒に居てくれたんですよね……　あたしの事全部知ってるのに、それでも言ってくれてるなら……と、ちょっと今、思います」 「そっか。　うん。向き合うのは、いいんじゃないかな」 「……織田さんがカッコイイって言ってくれたし」 「だってカッコいい子と思うんだけど……」 「お兄ちゃんの事が一番大好きだった高１とかに会ってるんで、もう、カッコイイとか意識した事もないんですよね……」 　あははー、と笑ってる。 　カッコよすぎるお兄ちゃんて、こうなると、弊害もあるのかも……。 　なんて、苦笑いを浮かべてしまう。 「でも、あの告白の仕方はちょっと納得いかなくて。　好きとかもなくて、どうせ泣くんだからオレにしとけって、どーなんだって気がしません？」 「あー……うーん。どうだろ。　オレにしとけって、何かオレは好きだけど」 「えーー？　ほんとですかー？　私、納得いかないんですけど」 　眉を寄せて、唇を尖らせてる絵奈ちゃんに、笑ってしまう。 　ほんと、可愛い。 　高瀬の妹かー……。 　昔の高瀬の事とか、知ってるんだよなー……。 　……なんか、色々聞きたいかも。 　学生時代の事とか。 　すっごいモテたんだろうなーとか。 　むしろもっとちっちゃい、可愛かった頃の事とか、聞きたいかも。 　思った瞬間だった。 　玄関で、鍵の開く音。 　あ。 　……帰ってきちゃった……。 　……今だけ、ちょっと残念。 　 　心の中でそう思いながら、立ち上がって、玄関に向かうドアを開こうとしたら、高瀬に開かれた。 「織田、ごめん――――……」 　急いで帰ってきてくれたんだな。と分かる。 　……なんか、珍しく、ちょっと髪の毛とか乱れてて。 　少し息が切れてて、ふ、と息をついてる。 　……それも、カッコイイし。 　ていうか、何してても、カッコイイな、ほんとに。 「お疲れ、高瀬。走ってきたの？」 「ん？　ああ、超早歩き」 　笑いながら高瀬がそう言う。 「絵奈は……」 　言いながら中を見て、絵奈ちゃんの姿を見つけて、はー、と息をつく。 「お前、急に来るなよ、織田が居なかったら、どうするつもりだったんだ？　電話繋がってからにしろよな」 「居なかったら帰ればいいと思ってたから」 　ごめんね、と絵奈ちゃんが笑ってる。