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◇ヤキモチ*拓哉

 ぱち、と部屋の電気を消す。いくつか操作して、窓際にあるオレンジ色の常夜灯だけを残した。鞄から、ゴムとローションを取り出して、布団の横に置いて。織田が無邪気に転がってる布団に手をついた。 「高瀬?」  ドキドキした顔して、織田が起き上がる。  じっと見上げてくる織田の前に座って、引き寄せて抱き締めた。   「――――……高瀬……今、する?」 「ん。いい?」 「……うん」 「――――……やっと触れる」  首筋に顔を埋めてキスすると、腕の中の体が、びく、と揺れた。  ……可愛い。 「――――……浴衣ってさ…… エロイよな……」 「……っエロおやじ……みたいな事、言うなよ」  真っ赤になって、そんな事言ってくるのがおかしい。 「……だってエロおやじみたいな事、これからしようと思ってるし……」 「っ……っ高瀬、マジで、恥ずかしいから、やめて」  やだやだ、とばかりに首を振ってる。  ――――……なんだもう、これ。  ほんとに可愛い。  頬や首筋に何度も、キスする。  くすぐったそうに藻掻かれるけれど、しつこく繰り返して。  さいごに耳まで舐めあげたら、あ、と声を上げて、織田が大きく震えた。 「……っい、やだ……それ……」  見上げてくる瞳に涙が浮かんで。  可愛くて、一瞬で興奮して。やばい。 「――――……」  浴衣の紐をほどいて、合わせ目から手を入れて、胸を撫でて乳首に触れる。びく、と震えた織田の髪が、オレの顔にふわ、と触れた。  それだけで、ものすごく愛しく、感じてしまう。 「……織田……」  キスしたくなって、ぐい、と顎を持ち上げて自分の方にむけさせたら。  めちゃくちゃ涙目の、真っ赤な顔に、思わず、脱力。 「なんでもう、そんな泣いてんの……?」 「……っだって、なんか、ゆっくり、やるの――――……恥ずかしすぎ……」  涙を指で拭き取って。  その頬に、キスした。 「――――……ほんと、可愛いな」  クスクス笑ってしまう。 「そんなに恥ずかしがられると……すっげえイケナイ事してる気分になるんだけど……」 「っ……イケナイ事、してんだよっっ……もう!」  泣きだしそうな感じで言う、織田。  思わず、よしよし、と撫でて、抱き締めてしまう。ひし、としがみつかれて、息をつく。 毒気を抜かれるってこういう事かな……。 「―――……なあ……織田、女とどーやってしてたの?」 「……それ、オレも、最近不思議で……」 「……そうなのか?」  不思議なんだ、と。 ふ、と笑ってしまう。 「……なんかもう、今、恥ずかしすぎて…… キスすら、どうやってたか思い出せなくて……」  はー、とため息ついてる織田。 「……織田って、何人位経験あるの?」 「――――……んーと…… 高校で2人で……大学は、付き合った子……何人だろ……って数えた方がいい?」 「……もういいや。数えないでいいよ」  興味で聞いてみてしまったけれど、数えないと分かんない位って事は、結構相手が居たって事で。そりゃ、女とは、ちゃんとしてたんだろうなと分かりはしたものの。  でも、なんか、少し、腹立つけど。  これが嫉妬だとは分かっていて、んー、と自分に呆れながら、とりあえず織田を抱き締める。  ……誰かの、過去なんかにヤキモチ妬く日が来るとは思わなかった。  こんな感情、初めてで、少し自分に驚いてしまう。  あったんだなー、嫉妬する、感情とか。  ――――……欠落してるのかもと思ってた位、織田と会うまで感じた事、無かったのになあ。結構今モヤモヤしてて、ほんと驚いてる。  すると。 「……たかせ」  織田が、ぎゅう、と抱き付いてきた。 「数わかんないとか言ったから、怒った?」 「――――……怒ってはないよ」 「でもやだった?」  じ、と見つめられる。 「完全にヤキモチ。――――……オレ妬くんだなーって、ちょっと驚いてるだけ」 「……ヤキモチって、初めてなの?」 「ん。覚えてる限り、あんまり感じた事ないな……去るもの追わずだったし」 「――――……オレは、めちゃくちゃ妬いてるけどね」 「ん?」 「高瀬が今まで付き合ってきた女の子達に」  そんな宣言されると、おかしくなってしまう。 「……じゃあオレ達、お互い妬いちゃうってことで……これからは、妬かせないようにしようね?」  そんな言葉に、ふ、と笑ってしまいながら頷いたら。  織田の顔が少しほっとして、笑んだ。 「オレさ、女の子としてた時は普通にできてたと思うんだけどさ。今、されるっていうのがめちゃくちゃ恥ずかしいのと……あとは……オレ、ほんとに高瀬が、好きで……高瀬に色々見られるのとかが、死ぬほど恥ずかしい、んだよね……」  ぎゅーーーー、と抱きついてくる。 「――――……でも高瀬と抱き合うのは、好き。だから……」 「――――……」 「……頑張る!」  ――――……頑張るのか。  一生懸命言ってくれてるのは分かるのだけれど。  なんだか可愛すぎて、可笑しすぎて、クッと笑いがこみあげてきてしまう。

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