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◇温泉*拓哉
「星めちゃくちゃキレイ。すごいなー」
すっかり肩までお湯に沈み込んで、織田が真上の空を見上げて、嬉しそうにしてる。
頬がほんのり赤くなってて。前髪が上がって額が出てて。めちゃくちゃ可愛い。 キスしたいなー。なんて思いつつ。
今は誰もいないけれど、いつ誰が入ってくるかもわからないから、我慢。
……うん、織田と居るとよくあるけど、またまた耐える拷問時間の到来。
「……高瀬とさ」
「ん?」
「ふたりきりで、こんなとこに居るっていうのがさ」
「うん」
「……まだ、不思議」
「――――……」
ふ、と笑いながら、自分の言ってる事に照れてるっぽい。
……可愛いなあ。
織田。
「――――……オレもまだ不思議だから、一緒だよ」
「……そうなんだ」
にこにこ、笑いながら、オレをじっと見つめてくる。
「オレね、今までつきあってた女の子達さ」
「うん」
「それなりに好きだと思ってきたはずなんだけどさ……」
「ん……」
「比べ物にならない位さ。高瀬が好きなんだよねー……」
お湯につかってほんのり赤かった顔が、そこまで言って、さらに赤くなった。
「…………ってオレは、急に何言ってんだろ」
急に気づいて、恥ずかしくなったらしくて、わたわた慌てだす。
「ごめん、なんか、言ってから恥ずかしくなった」
織田は、手でパタパタと扇いでいる。
――――……つーか。ほんと。織田って。
意識しないで、煽ってくるよなー……。
めっちゃくちゃキスしたい。
「――――……なんか、のぼせそう。 ……オレ、もう出てていい?」
「待てよ。一緒に出るから」
咄嗟に腕を掴んで、近づいたら。
――――……真っ赤になるのが、ほんとに可愛くて。
一瞬だけ、唇を重ねてしまった。
至近距離で見つめ合うと。かあっと赤くなる。
なんだかなあ。可愛すぎて。
――――……そろそろ、限界。
「――――……部屋帰ろ?」
そう言うと、織田が、うん、と頷く。
歩き出した瞬間、露天の扉が開いて。人が入ってきた。
「――――……ギリギリセーフだな」
と言ったら、「セーフじゃないってば、心臓に悪いし」と、ヒヤヒヤした顔をしてる。シャワーを浴びて、脱衣所に戻る。
「にしても、なんかほんとに空いてるね、お風呂」
「食後だからかな。 もう少ししたら混むと思うけど……」
「そっかー」
言いながら、織田が、浴衣を羽織る。
「――――……なんか良い感じにほんのり赤いな」
頬にすり、と、触れる。
浴衣を羽織っただけ、髪も濡れたままの織田が、すごく可愛く見える。
「……っ」
「……また赤くなるし――――……どんだけ可愛いの、織田」
くしゃくしゃ、その髪の毛を撫でた。
ドライヤーで髪を乾かしてから部屋に戻ると、風呂に入ってる間に食事が片づけられて布団が敷かれていた。
「ふとんーー きもちいいー……」
とか言いながら、織田が布団にダイブしてる。
ほんと、何も、考えてないな……。
布団にダイブとか……。
……可愛いけど。
苦笑いが浮かんでしまう。
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