105 / 234

◇温泉*拓哉

「星めちゃくちゃキレイ。すごいなー」  すっかり肩までお湯に沈み込んで、織田が真上の空を見上げて、嬉しそうにしてる。  頬がほんのり赤くなってて。前髪が上がって額が出てて。めちゃくちゃ可愛い。 キスしたいなー。なんて思いつつ。  今は誰もいないけれど、いつ誰が入ってくるかもわからないから、我慢。  ……うん、織田と居るとよくあるけど、またまた耐える拷問時間の到来。 「……高瀬とさ」 「ん?」 「ふたりきりで、こんなとこに居るっていうのがさ」 「うん」 「……まだ、不思議」 「――――……」  ふ、と笑いながら、自分の言ってる事に照れてるっぽい。  ……可愛いなあ。  織田。 「――――……オレもまだ不思議だから、一緒だよ」 「……そうなんだ」  にこにこ、笑いながら、オレをじっと見つめてくる。 「オレね、今までつきあってた女の子達さ」 「うん」 「それなりに好きだと思ってきたはずなんだけどさ……」 「ん……」 「比べ物にならない位さ。高瀬が好きなんだよねー……」  お湯につかってほんのり赤かった顔が、そこまで言って、さらに赤くなった。 「…………ってオレは、急に何言ってんだろ」  急に気づいて、恥ずかしくなったらしくて、わたわた慌てだす。 「ごめん、なんか、言ってから恥ずかしくなった」  織田は、手でパタパタと扇いでいる。  ――――……つーか。ほんと。織田って。  意識しないで、煽ってくるよなー……。  めっちゃくちゃキスしたい。 「――――……なんか、のぼせそう。 ……オレ、もう出てていい?」 「待てよ。一緒に出るから」  咄嗟に腕を掴んで、近づいたら。  ――――……真っ赤になるのが、ほんとに可愛くて。  一瞬だけ、唇を重ねてしまった。  至近距離で見つめ合うと。かあっと赤くなる。  なんだかなあ。可愛すぎて。  ――――……そろそろ、限界。 「――――……部屋帰ろ?」  そう言うと、織田が、うん、と頷く。  歩き出した瞬間、露天の扉が開いて。人が入ってきた。 「――――……ギリギリセーフだな」  と言ったら、「セーフじゃないってば、心臓に悪いし」と、ヒヤヒヤした顔をしてる。シャワーを浴びて、脱衣所に戻る。 「にしても、なんかほんとに空いてるね、お風呂」 「食後だからかな。 もう少ししたら混むと思うけど……」 「そっかー」  言いながら、織田が、浴衣を羽織る。 「――――……なんか良い感じにほんのり赤いな」  頬にすり、と、触れる。  浴衣を羽織っただけ、髪も濡れたままの織田が、すごく可愛く見える。 「……っ」 「……また赤くなるし――――……どんだけ可愛いの、織田」  くしゃくしゃ、その髪の毛を撫でた。  ドライヤーで髪を乾かしてから部屋に戻ると、風呂に入ってる間に食事が片づけられて布団が敷かれていた。 「ふとんーー きもちいいー……」  とか言いながら、織田が布団にダイブしてる。  ほんと、何も、考えてないな……。  布団にダイブとか……。    ……可愛いけど。  苦笑いが浮かんでしまう。

ともだちにシェアしよう!