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◇一緒に*圭 2

 一緒に暮らす。  一緒に暮らす、か……。  高瀬と毎日毎日、一緒になるんだよね。  オレ達って、仕事も一緒だから、  朝、仕事中、昼、帰り、夜も、ずーーーーーーっと一緒。  オレは……もうそんなの絶対に、嬉しいけど。  …………高瀬って、そんなの耐えられるのかな。 「……あのさ、高瀬」 「ん」 「一緒に暮らすってさ」 「うん」 「……オレが、高瀬のマンションに引っ越すってこと?」 「――――……嫌?」 「嫌じゃないけど……あのさ」 「ん」 「今みたいにオレが通ってる位ならさ、今日はひとりになりたいって言われたら行かないってできるけど……」 「……ん?」 「……一緒に住んじゃったら、そういうのもできないよ? 仕事も一緒なんだから、本当にオレとずっとずっっと一日中一緒になっちゃうんだけど……そういうの、いいの?」  本当に、大丈夫なのかな。 「オレさ――――……織田が女だったら、今プロポーズしてる」 「え」 「結婚て形で、一緒に居ようって言うと思う」 「――――……」 「でもそれは無理だから言ってないだけで」  このむちゃくちゃカッコいい人は、  いったい今、何を言ってくれちゃってるんだろう。  プロポーズ、してくれる位の、感覚で言ってるのか……。   「どうしたら、ずっと一緒に居たいって信じてくれる?」 「――――……」 「オレ、一緒に住もうって言ったの、人生で2回目だからな」 「――――……」 「どっちも、織田にだから」  思わず、ぷ、と笑ってしまった。 「会ってまもない頃に言ったのもカウントすんの?」 「会って間もない頃に、オレが一緒に住もうて言うなんて、逆にすごいんだよなー……分かんない?」 「……なんとなく分かる」  くす、と笑って。高瀬を見上げる。 「――――……分かった」 「え?」 「……高瀬と、住む」 「――――……いいの?」 「住んで、もしお互い、やっぱりやめようってなったら、また引っ越せばいいし」 「――――……」  イイよと言ったら、逆に高瀬は何も言わなくなってしまった。  じー、とオレを見つめてる。 「……今のオレは、どう考えても、ずっと高瀬と居たいから。せっかく、高瀬が居たいって言ってくれてるのに、一緒に居ないっていう選択肢はないかな、と思って。 もったいないよね、一緒に居たいのに、居ないなんて」  まっすぐ、見上げて、そう伝えたら。  むぎゅ、と抱き締められて。 また、その胸に埋まる。 「――――……織田、好き」 「……高瀬……」  あんまりにきつく抱きしめられて、笑ってしまう。 「――――……オレも、高瀬、大好き」  ぎゅー、と抱き返す。 「――――……いつ引っ越す?」 「え。いつって……」 「いつ? 来週?」 「……え、引っ越しってそんなにすぐできるの?」 「ここの契約期間とかなければ? だって引っ越し先は決まってるから荷物さえ運べればいいんじゃねえ?」 「そこ調べるね。あと親にも言うし、引っ越し屋さん聞いてみて……かな?」 「ん、分かった。オレんち使ってない部屋、片づけとくし」  なんかあっという間に、引っ越し日まで決まってしまいそうで。  いいよと言ったけれど、ちょっと躊躇。 「――――……高瀬さ」 「ん」 「もいっかい、考えてくれていいからね、高瀬のあの高瀬っぽい家が、オレに…… 荒らされちゃうんだよ? 一緒に居たいけど、ほんとにいいのかなーって思っちゃうし。とりあえず、一緒に暮らすのはオレはいいんだけど、高瀬もっかい考えて。 何なら、高瀬のすぐ近くに引っ越すとかでもいいんだし」 「荒らされるって……」  高瀬はクスクス笑ってる。 「――――……オレっぽい家、なんでしょ? ここ」 「ん。置いてあるものが、織田っぽい」 「たとえば?」 「クッションとか。家具の色とか。 カーテンとか。なんか写真がいっぱい飾ってあんのも織田っぽい」 「――――……確かに、高瀬んちと、そもそもの色が違うよなー……」 「ん」 「……だからさー、そういう色からして、違うわけじゃん。……マジで、いいの??」 「――――……織田の部屋を作るから、織田ぽい部屋にしてくれていいよ。そういうのも、今日オレんちで色々話そ」 「……うん、分かった」 「……オレの一番に大事なのは、お前と居たいって事だから、それ以外はなんでもクリアできると思うけど」 「――――……」  何だかな。  高瀬ってほんとに。 「……ほんとに何で、オレのこと、そんなに好きって言ってくれるの??」  ほんとに純粋に不思議で。  何度も、色々言ってくれてはいるのだけれど、やっぱりすごく不思議で。  ついつい、聞いてしまった。

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