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◇ついてく*圭

「もうお前、先戻ってろよ」  高瀬の言葉に、須長は嫌そうな顔を見せる。 「――――……はいはい。ほんっとお前、変わってねーな」  愚痴っぽく言って、苦笑いしながら須長が出ていって、トイレのドアが閉まった。  と、同時に。 「……織田」  囁かれて、抱きよせられて。ドアから少し隠れる所に背中を軽く押し付けられて。急に深くキスされた。 「――――……」  ドア開いても、見えはしないとこだけど……。  気になって、全然集中できないので、胸に手をついて高瀬を離す。 「……た、かせ……」  唇を離して、見つめる。  あー、なんか……高瀬だなあ。 「……高瀬、おかえり……。 すっげー、会いたかった」  ドアが気になりながらも、ついつい、ぎゅ、と抱きついてしまった。  と、すぐに、引き離されて。   「――――……つか、だめだ。 織田、出ようぜ」 「え???」  急な移動に、高瀬を見上げると。 「……こんなとこで出来る事じゃおさまんないから、帰ろ」  言われて、意味が分かった瞬間、かあっと頬が、熱くなる。  腕を引かれたまま、店内に戻る。 「あ、戻ってきた。 大丈夫、織田? 気分悪いって?」  加藤に聞かれて、え、と思って、須長を見る。くす、と笑われて。  あ、そういう事にしてくれたのかと悟って、オレは、うん、と頷いた。 「顔赤いもんなー……良かったな、高瀬来てくれて。つうか、高瀬が急に来て、すげー女子がざわついたぞ……」 「あ、そうなんだ……」  最後の方をこそこそ言った加藤に、苦笑いで答えていると。  高瀬の事を、周りの女子達が見上げてるのが、見える。  でも、高瀬は全く見向きもしないて、自分とオレの鞄を、手に取った。 「悪いな、加藤。織田連れて先出る」 「うん、いーよ。織田、気を付けてな」 「あ、会計まだなんだけど」 「あーまだ清算してないから立替とく。月曜でいいや」 「分かった。ごめんね」  その会話が終わると同時に、高瀬がオレの背中に手を置いた。 「じゃあまたな」  周りに挨拶してる高瀬に、背中を軽く押されて歩きながら、オレも「じゃあね」と手を振る。振り返った時に、須長と目が合って、ぷ、と笑われ。須長にも手を振った。  女子達の、せっかく来たのに帰っちゃった、的な声が聞こえてくる。  高瀬から鞄を受け取りながら、店の中を歩いて外に向かいながら。  高瀬の、カッコいい背中を見つめる。  ……高瀬って、どんだけ自分が視線向けられてるかとか全然、気づいてないんだなあ……。気づいてないのか、完全にスルーなのか。まあオレ的には嬉しいけど……。   店の外に出ると同時に、高瀬に腕を取られて。引かれる。 「――――……織田、ちゃんとついてきて? タクシー乗るよ」  ……もうどこまでもついていく、と、言いたいくらい。  カッコイイ笑顔で振り返られて。 オレは、うん、と、頷いた。    

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