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◇お友達*圭

 プラネタリウムが入っているビルは、下に降りれば、ショッピングモールに繋がっているので、レストラン街のハンバーグの店にやって来た。  奥のソファ席に俊兄と真宙が座って、真宙の横に高瀬。高瀬の前に来海。来海の隣がオレ。 「来海はこれ!」 「おー、来海、即決だね」  メニューを見た瞬間迷わないで決める来海に、何だか笑ってしまうと、俊兄も笑いながら。 「そぅ、すごくないか? 一目で決めるんだよ、いつも」 「すごいねー、大物になりそう」 「高瀬くんに即決でプロポーズする位だもんな」  俊兄が呆れたように来海を見ながら言う。  オレがクスクス笑うと、高瀬も真宙に手を繋がれながら、笑ってる。 「だって拓ちゃんカッコいいんだもん」  分かる。分かるよ、来海。  お前、ほんと、見る目、ありすぎると思う。  将来、イイ男、見つけるんだよ?  うんうん、と頷きながら、よしよし、と撫でていると。  俊兄は笑いながら子供用のメニューを真宙と見始める。 「真宙はお子様セットか?」 「うん」 「高瀬、メニューはい」  来海の前からメニューをたたんで、高瀬に渡す。 「織田は? 決めた?」 「うん。そこのハンバーグランチにする」 「ん」  受け取って、高瀬がメニューを開いた。 「いいなあ」  来海が突然そんな風に言う。 「いいなあって?」 「拓ちゃんも、圭ちゃんもいいなあ」 「何が?」  クスクス笑いながら、来海を見つめると。 「圭ちゃん、拓ちゃんとお友達なんでしょ?」 「うん?」 「来海も、圭ちゃんと拓ちゃんとお友達になりたい」 「お友達に?」 「だって結婚できないし……」  むむむーー、と膨らんでる可愛いほっぺ。  クスクス笑ってしまう。  メニューを見てた高瀬と俊兄も、来海を見て、ぷ、と笑ってる。 「オレお友達っていうの?」 「まあ正確には、おじさんだよな?」 「え゛え゛っ!なんか嫌だ」  と咄嗟に言ってしまったけど。 「まあ……姪なんだよねー。てことは、ほんとは、圭ちゃんじゃなくて、おじさんて呼ばれるとこ?」  んー、と来海を見てると。 「圭ちゃんは、おじさんじゃないよ?」  と来海。 「パパはおじさんだけど」  そう言う意味じゃないんだけど。  俊兄が、おーい、来海―、と言って、苦笑いしてる。 「オレはさ、パパの弟だから、来海にとっては、おじさんなんだよ?」 「……でもおじさんじゃないよ?」 「ふふ。 ありがと」  可愛い。よしよし、と撫でてると。 「パパだってまだ若いだろ」 「ううん、パパはおじさん」  はーやれやれ。と俊兄。 「俊兄、来海に勝てないね」  クスクス笑って言うと、俊兄はますます苦笑い。 「お前も娘できたら分かるって。3才くらいから、勝てないぞ」 「……そうなんだね」  ……娘、できたら、かあ。  前のオレなら、子供3人欲しいし、娘、絶対ほしい、と。  絶対俊兄に返してたとこなんだけど。  ――――……もう言えないなあ。そのセリフ。  今のオレは。  まだ生まれてない子供より。今側に居てくれる高瀬と、離れたくない。  ずっと居られるなら、居たい。  そう、思っちゃってる。 「高瀬、もう決まった?」 「ああ。決まった」 「俊兄は?」 「圭のと同じの」 「パン? ライス?」 「ライス」 「高瀬もライス?」 「ん」 「来海、そこのボタン押してくれる?」 「うん」  来海がボタンを押して、店員がやってくる。  注文を済ませた所で、俊兄が立ち上がった。 「悪い、さっき行けば良かったんだけど……食事前に2人連れてトイレ行ってくる」 「うん。いってらっしゃい」  俊兄が2人を連れて歩いて行く。振り返る2人にバイバイで見送って。  オレは、高瀬を、見つめた。 「なんか、高瀬遠いね」 「真宙くんがオレこっちにって言ったからな」 「でもって来海は、高瀬の前が良いって言ったしね」  クスクス笑いあって。 「……ありがとね、高瀬」 「そんな何回も礼言わなくていいよ」 「んー。でもなんか……付き合ってくれてさ」  全然デートっぽくなくなっちゃったけど。  ……楽しそうに笑っててくれて。 「織田さ」 「ん?」 「……覚えといてほしいんだけど」 「うん」 「オレ、織田が楽しそうなところなら、どこでも付き合うから」 「――――……何それ」 「嫌々じゃなくてさ。付き合いたくて一緒に居るから」  ふ、と笑いながらそんな事言われると。 「……泣くよ、オレ」  ほんとに泣きそうなのを隠しながら言うと、高瀬は「泣かないで」と言いながら、ふ、と笑った。

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