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◇ちーん*圭
うん。子供って、やっぱり大変だなーお世話。
母親なら慣れてるのかもだけど、俊兄見ててそう思った。
真宙がまだ1人では食べれないから、そっちを見てる間に、来海が急にジュースをこぼしたり。今はオレ達が居るから落ち着いてるけど、きっとこれ、俊兄1人だったら大変だったろうなあと思っていたら。
「良かった、圭に会えて」
同じタイミングで、俊兄も思ったみたい。
「1人じゃ大変って言うのも分かる。オレ達居なかったら、両脇に子供2人になるの?」
「来海が前に座って、真宙は子供椅子かなー?」
「そうなんだ」
「お前も子供3人は欲しいとか言ってたもんな。3人居たらもっと大変だぞ?」
「うん。まあ……そーだね……」
笑みを作って、少し考えながら頷く。
高瀬は、真宙の相手をしてて、食べさせてくれてる。
「最近仕事はどうだ? 慣れてきたか?」
「あーうん」
頷いた所で、高瀬と目が合った。ふ、と自然とオレは笑んで。
「高瀬が隣に居るんだけどさ。めっちゃ仕事できるから、助けてもらって何とか」
「んな事ないよ。オレ居なくてもやってるって」
すぐに高瀬が、突っ込んできて笑う。
俊兄は少し間を置いて、ああ、と笑った。
「高瀬くんて、職場の同期なのか?」
「そう」
頷くと、俊兄が、クスクス笑った。
「ん? 何?」
「いや。――――……職場でずっと隣に居て、それで土曜も一緒にプラネタリウムとか。先週も、旅行行ってたんだよな? 仲良しすぎる位だなーと思って」
俊兄は、別に深い意味を持って言ってるんじゃなさそうなのは、なんか、言い方で分かるんだけども。
――――……ちーん。
頭の中で、鐘が鳴る。
………そう、だよね、そうなるよね、確かに。
仲良すぎッて、思うよね。
「いいなあ、仲良しでー」
来海が、よく分からない入り方で、突っ込んでくる。
「来海も仲良しがいいー」
和む……。
可愛いなー、来海。
よしよし、とナデナデして、とりあえず今の俊兄の仲良し発言はスルーすることにした。
そしたら、俊兄が高瀬の方を向いて。
「圭がなんか、お世話かけてる?」
なんて、聞いている。
変なこと聞かないでよー、お世話ならいっぱいかけてるけど。
仕事でも、なんかプライベートでも、いっぱいかけまくりな気がするけど。
「お世話なんてしてないですよ」
「仕事、助けてもらってるんだろ?」
俊兄がオレを見て言うので、うん、そう、とオレが頷くと。
「オレ、専門卒なので詳しいだけで、織田は一生懸命覚えるから、全然。助けてもらってるのはむしろこっちで」
「圭、何助けてんの?」
クスクス笑ってオレを見ながら高瀬に聞くと。
「プログラムとかって、根詰めてやってるとまあ割と病んでくるというか。すごく疲れる時があるんですけど。……織田が明るいから、和むというか。おかげで毎日仕事楽しいですし」
クスクス笑いながら高瀬が言う。
「圭って高瀬くんの癒しなの?」
どんな質問なんだー!
俊兄のバカ―!
わあわあと心の中で騒いでいると。
「そうですね。かなり」
なんて、高瀬が、オレを見て、ふ、と笑う。
…………それって、バレてもいいと思って言ってるのかなあ? まあ。俊兄、全然気づいてる感じではないけど。
そして、何でそんな笑顔でこっち見ちゃうかなあ。
ああもう、赤面しそう。
「く……来海さ、プリン食べる? 開けてあげるね」
「うん、ありがとー圭ちゃんー」
いえいえ、こちらこそ、プリンがあって、ありがとう。
「おいしそうだねープリン」
「上げないよ―圭ちゃんー」
「取らないよー」
オレはもう完全に、来海のプリンに逃げる事に決めて、楽しいやり取りをせっせと紡いだ。
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