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◇お礼に*圭
男3人いるとは言っても、食事の世話となると結構大変なんだなーと思い知りながら。
何だか慌ただしい食事が終わった。
「俊兄ご馳走様ー」
「ご馳走様です」
結局、払うからと押し切られ、もう素直に受けることにした。
「ほんと助かった」
俊兄はずっとそう言ってるし。
オレと高瀬も笑いながら。
「ちっちゃい子見るって大変だねえ」
とオレが言うと、「まあ奥さんに感謝しないとだよなー」と俊兄。
「きっとそーだね」
とオレも頷いていたら、来海が高瀬の手を取った。
「拓ちゃん、ゲーセン行こう、ゲーセン!」
「えっ。ゲーセンって、来海の口からでると笑っちゃうんだけど」
とオレが笑ってると。
真宙も高瀬のもう片方の手を取って。
「拓ちゃん、ゲーセン!」
来海よりももっと幼い真宙からもゲーセン。
もう、面白すぎる。
「俊兄が教えたんでしょ、ゲーセン」
「……バレた?」
「バレるよ」
クスクス笑いながら、両手を掴まれてる高瀬に、笑顔になってしまうオレ。
なんか可愛い。3人とも。
「ゲーセンなんてどこにあるの?」
「この1こ下の階。いいよ。来海、真宙、パパと行こう?」
「「やだー!」」
2人が揃って言う。
「でも圭ちゃん達お買い物いくんだって?」
と、俊兄が言うのだけれど。
「圭ちゃん、一緒にゲーセンいけない?」
来海がまっすぐ見上げてくる。
オレ1人なら全然付き合うけど、どうしようかなと思った瞬間。
「いいよ? 織田」
高瀬の声に、顔を見ると、ふ、と笑って。
「ゲーセン、いこ。何やんの、来海ちゃん」
高瀬が、来海の前にしゃがんで聞くと。
「じゃんけんポンのゲーム」
「ああ、メダルの? 懐かしい、まだあるんだ」
「じゃあ行こっか」
オレと高瀬が言うと、来海は俊兄を見て、嬉しそうに笑う。
もう場所も知ってるみたいで、来海と真宙がエスカレーターに向かって、動き出すと、俊兄がオレ達に、ごめんな?と言いながら笑う。
「こら、手つなぐぞ」
俊兄が真宙を抱っこして、来海と手を繋いで、先にエスカレーターに進んでいった。高瀬と2人エスカレーターに乗る。
「高瀬ー」
「ん?」
「……ありがとうね」
1段上に居る高瀬を見つめて、オレが言うと。
エスカレーターで元々近くにいるのに、更に顔を寄せて来て。
「お礼は、後で、して?」
……して?
「して?って?」
めちゃくちゃ近い高瀬の顔。もう、心臓に悪い……。
ドキドキというかは、ドックンドックン。胸が痛い。
「……キスして?」
「――――……っ」
そういう系のセリフを、言われちゃうかなと思って覚悟を決めたけど。
思ってたよりももっと、カッコ良すぎる笑みを浮かべて言われて。
もう咄嗟に呼吸も止まりそうになるけど……。
「それ、で、お礼になる?」
息を詰めたまま、そう聞いたら。
高瀬は、一瞬ぴた、と止まって、まっすぐオレを見て。
ふ、とその瞳を柔らかく緩めた。
「なるに決まってるだろ。聞くなよ?」
クスクス笑われて。
ポンポン、と肩を叩かれて。
うん、と頷きながら。
もう心の中は、いつも以上に、大好きがいっぱいな感じになってしまう。
この好きなの、際限ないかもしれない……。
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