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◇側に居れれば*圭
来海も真宙も、高瀬と遊ぶの、楽しそう。
……高瀬があんなに子供に好かれるとか、思わなかった。
なんかすごい優しい顔、してるもんな。
会社の女の子とかと話してる時は、めちゃくちゃクールだったりするけど。
高瀬たち3人がじゃんけんのゲームで遊んでるのを後ろから見ていたら、俊兄がオレに、「なあ」と話しかけた。
「圭は彼女、居ないのか?」
「え。何で。突然」
高瀬を見ていた視線を上げて、俊兄を見返すと。
「だって、せっかくの週末に男2人で遊んでるからさ」
「ああ……」
「先週も今週もって、結構だよな。まあ……高瀬くん、良い人そうだけど」
「うん。そうだね……」
「子供いっぱい欲しいなら、早く結婚した方がいいぞ? 自分が年取ると、きついぞ、子育て」
「うん。……そうだねー」
――――……俊兄が言ってることは、前からオレが言ってた事で。
子供いっぱい欲しいから早く結婚したいなーとか。
散々俊兄には言ってきてたから。そう言うのも、分かるんだけど。
「あのね、俊兄」
「ん?」
「……オレ、最近その考え、ちょっと変わってるの」
「ん? その考えって?」
「今はさ……好きな人と、居れるだけでいいなって。思ってて」
「――――……? 結婚とか子供は?」
「……んー。その形にこだわらなくてもいいかなーとか。……子供も別にいいかなーっとか」
「――――……ふーん?」
俊兄はちょっと首を傾げながら。オレを見つめた。
「まあ、結婚と子供が、人生で絶対に必要かって言ったら、そうとも言い切れないけどなぁ……」
「……うん」
「でも、どーした? 前まで来海たちに会う度に、早く結婚して子供欲しいーって、言ってたのに」
「うん……まあ色々……」
前のオレ。
どんだけずっと言ってたんだ。
苦笑いが浮かんでいるオレに、俊兄も、ちょっと笑った。
「どーいう心境の変化?」
「うん……まあ……」
高瀬が好きなんだ、なんて。
言えるはずもないけれど、なんだか、喉の奥までは、来てる気がする。
……言えないけど。
言葉を濁していたら。俊兄が突然、オレの腕を掴んだ。
「……お前、不倫とかはやめろよ?」
「えっ」
「どっちも幸せになれない恋だぞ。もしそこが実ったって、元の相手の人生を狂わせてるってことだし……」
「ってなんだよ、それ、不倫をオレに解くなよ!」
もう、そんな訳ないだろっ!とぷんぷん怒っていると。
「あ、違うの? あーよかった。好きな人と居るだけで良いとか言うから」
俊兄は、苦笑いを浮かべている。
「そんな事しないよ」
もう。ああ、びっくりした。
――――……でもそうなんだなあ。
こんな事言うと、そっちが浮かぶのか。
まあでも、そっか。まあ。分かるけど。
男同士とか、分かんないか。
「織田、来てみ? 結構面白いよ」
笑いながら、高瀬が振り返る。
途端に、ぱあっと、明るくなるオレの心ん中。
「うん」
めっちゃ笑顔になってるなーオレ。
オレを振り返ってる高瀬と、ちっちゃい可愛い視線たちに近付きながら。
側に居れれば良いって。
今ほんとに思うんだよね。オレ。
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