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◇好き*圭

 しばらくくっついていたんだけれど、のぼせちゃうから出ようって事になって、シャワーを浴びてバスルームを出た。部屋着に着替えて、髪を拭いていると、高瀬がオレにドライヤーをかけ始めた。 「――――……」  ……しあわせー。  向かい合わせで、高瀬が右手でドライヤー、左手で優しく髪の毛を弄ってくれる。少し俯いたまま、高瀬の首元を見つめる。  上向くとすぐ近くに高瀬の顔があるので、ちょっと恥ずかしいから、首元見つめたまま、手持無沙汰に、乾くのを待つ。 「――――……」  優しーな。高瀬……。    触れ方が、優しい。  ――――……抱き締めてくれるのも優しい。  オレにかけてくれる、言葉も優しい。  高瀬は、オレの事を良い人みたいに言うけど。  高瀬の方がよっぽど優しいけどな。  自覚ないとこも、なんか、好き。  オレ優しいだろ、とか真顔で言われたら、ちょっと嫌かも。 「乾いたよ」 「貸して? オレもやる」 「ん」  高瀬のドライヤーを受け取って、高瀬が少し頭を下げてくれるので、乾かしていたのだけど。 「これ苦しくない?」  クスクス笑ってしまうと、んー?と高瀬も笑う。 「ちょっと待ってね」  頭頂部あたりだけ先に乾かしてから、高瀬に顔を上げてもらった。 「あとは、届くから」  っていうか。  高瀬、背、高いなあ……。  ……ああ、ほんと、カッコいい。    乾かしてる一本一本の髪の毛まで、なんかキラキラして見える。という、オレの好き好きっぷりは、ほんとにすごいなーと自分でも思う。  こんなに好きな人に、好き放題触れるとか。  いいのかな、こんなに幸せ過ぎて。  思い切りニコニコしてしまっていたと思う。  自分の顔が緩んでることには気づいていた。 「もう、いい?」  高瀬に急にそんな風に聞かれて。  あ、ごめん、長かった? とスイッチを切って。 「違うよ」  そう言われて、ドライヤーを高瀬が受け取って、台に置いてくれた。  違う?って?  高瀬の顔を見ようと、顔を上げたら。 「ん」  ちゅ、とキスされて。  一瞬離れるのかなと思ったけど、結局、また深く唇が重なってきた。 「…………っ??」  高瀬って。――――……ほんと。キス。好きだなぁ。  ……でもって、オレは、高瀬のキスが、ほんとに好き。  包まれるみたいに抱き締められてるので、オレは、高瀬の背中に軽く、腕を回して、きゅと抱き付く。  背中。――――……男っぽくて。好き。  スーツ着てると、めちゃくちゃカッコいい、あの背中に。  抱き付いてるとか。……もう好きすぎて、なんか、死にそう……。  オレ男なのに。  ……男だけど。  ――――……高瀬が好きすぎて。  優しく絡んでいた舌が、ゆっくりと外れた。 「何でそんな可愛いかな……」 「……?」  頬に触れられて、高瀬がクスクス笑うのをただ、見上げる。 「ドライヤー、そんな楽しそうにされるとさ。乾くの待ってられないんだけど」 「――――……」  高瀬の大きな手が、うなじから、髪の毛の間を通って後頭部に。そのまま、引き寄せられて、またキスされる。 「……ん、ン」  ……よく分かんないけど。  高瀬も、オレの事、好きで。  ……可愛いって、いつも――――……思ってくれてるみたいで。  そんな風に、優しく笑われて、こんな風にキスされちゃうと。  ――――……大好きすぎて、もう無理……。  お風呂あがり。超温まって、ぽわぽわしていたのに。  余計、なんか、フワフワ浮いてるみたいな。  オレは、キスがゆっくり離れるまで、暫くの間。  ずっと高瀬にしがみついてた。  

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