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◇女避け?*圭
「……高瀬のスーツはねー」
「ん?」
「オレだけじゃないと思うよ。妄想してんの」
「――――……ん??」
クスクス笑う高瀬。
「絶対女の子もさ、抱き締められたいなーとか、ぜっっったい思ってると思う」
力説してると、高瀬は笑いながら、オレの頬を摘まんだ。
「じゃあ、織田は、抱き締められたいって思ってるってこと?」
「――――……」
あ。そうでした。
今、オレの話だった。
しかもオレよく考えたら今、女の子もって言った。女の子も……もって。
もう、オレがそうだから、女の子もって事だよね。
ああなんか、恥ずかしい。
「そっか……どういう時思うの?」
「ど……どういう時?」
「普通に横に座ってる時も思うの?」
「――――……えっと…… 座ってる時は、そうでもないかな……?」
「ふうん?」
「……立って、なんか。背中のラインとか……? 腕、とかみちゃった時……とか……」
何だこれ。オレ今何言ってんの?
は、ハズかしすぎる……。
意識したら一気に恥ずかしくなって、顔が熱くなった瞬間。
高瀬が、ぷ、と笑いながら近づいてきて、ちゅ、と唇にキスされた。
「じゃあ、今度立った時、抱き締めてあげるよ」
「――――……」
え。嬉しい。
……じゃなくて。しっかりしろ、オレ。
「ぜ、絶対オレ、真っ赤になって、一瞬で皆に、バレるけど……」
そう言ったら。
高瀬はまたクスクス笑って。
「いいんじゃない? オレらがそうってなったら、迫ってくる奴も居なくなるだろうし。安心」
「本気?」
「まあ、……他の奴を避けるようにって考えると、本気だけどね」
高瀬はんー、と考えながら、そんな事を言う。
「……オレにより、高瀬の方に行く人が絶対的に多いと思うから、それで、安心するのは、オレだけじゃない?」
「――――……織田を好きな奴。居ないと思ってるんなら、ほんと、バラして、女よけしたい」
「……??」
その言い方ってなんだろう。
「織田を好きそうな子に、心当たり、無い?」
「……えー…………無い」
「……マジで、バラしたい」
ぶに、と頬を摘ままれる。
「あとさー。男。にも気を付けて。分かった? 織田、可愛いから、いつ惚れられるか分かんないからな」
「――――……無いと……思うんですけど」
「ある。ほんと気を付けて」
「――――……」
……意味が分かりません。
ていうか、どう考えたって、女よけして欲しいのは、高瀬さんですが。
言いたいけど。
なんか、むー、と眉を寄せて、オレの頬を挟んで、じっと見つめてくる高瀬に言えず。
「……気を、付ける。一応……」
そう言ってみたら。
「一応じゃダメだよ」
とさらに突っ込まれる。
「ほんとに気を付けて」
「……はい」
答えながら、ぷ、と吹き出してしまった。
「だからほんと、織田は、マジメに聞いてないだろ」
高瀬が、ほんとにまったくもう、みたいな顔をして、文句言ってるから、余計おかしくなってくる。
「オレより、高瀬気を付けてよ。すっごい綺麗な子とか、すっごい可愛い子が、ご飯行きましょうよーって言ってきたらどうするの」
「――――……行くと思う??」
「……う…ん。どうだろ。ものすごい可愛かったら……とか。あと、ほら、二人じゃなくて、皆で行きましょうよーっとか、断れない感じだったら……とか?」
「……100歩譲って、皆でっていうかのが断れない感じだったとして、行ったとして。――――……ってそもそも、織田がその中に居ない、皆でっていう関係が今、あんまり無いけどな」
……まあ確かに。会社関係だと、オレらはいつでもセットで居る気がするけど。
「まあもしあったとして、行っても、個人的に誰かとどーかなんて、絶対なんない」
「――――……」
「そこはオレの意志なんだから行かないって決めたら行かない」
そうなのか。絶対無いのか。
と、言葉だけだとしても、嬉しくなっていると。
「……でもさ、織田はさ、連れ込まれちゃったら困るし。だからほんとにお前は気をつけて」
「――――……」
これ、高瀬って、何回か言ってくるけど、本気なのかな。
――――……ふざけて言ってるんじゃなくて、本気??
うーん。高瀬の、ここの部分だけ、毎回だけど、全くよく分からない。
「絶対また本気にしてないだろ」
あ。バレてる。
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