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◇高瀬の指*圭
「ただいまー」
高瀬と一緒に、高瀬の部屋に帰ってきた。
高瀬の学生時代の友達に会えて、なんだかめちゃめちゃ話してもらっちゃったし。
「今週忙しかったけどさ」
「ん?」
「最後の飲み会が楽しいと、いいよね。今週楽しかったってなるよね」
そう言って高瀬を見上げると、ふ、と優しい表情でオレを見て。かと思ったら、腕を引かれて、軽く、キスされた。
「わ……」
不意打ちだ。
「……高瀬といっぱい、キスしてる、けど」
「うん?」
「……急にされると、ドキドキが半端ない。これ、慣れそうにないのだけど……」
しみじみ言ってしまうと、高瀬はクスクス笑いながら、オレの頭をくしゃくしゃ撫でて、至近距離からオレを見つめた。
「シャワー浴びて、ゆっくりしよ」
「あ、うん! そだね。高瀬、先入る?」
「一緒に……と思ったけど、今日はやめとこっか」
「……どして?」
いつも一緒に入る訳ではないし、一緒にっていうのも、まだまだ恥ずかしいのだけど、わざわざやめとこうと言われるとちょっと気になって、聞いてみると。
「風呂ですんの疲れるだろ? のぼせるし」
「――――……」
「オレ、絶対一緒に入ったら、手出す自信があるから」
「なんの自信……」
苦笑いを浮かべていると、高瀬の手が、オレの頬に触れた。
「ほんとはすぐにでも触りたいんだけど」
「――――……」
「でも、なんか焼き鳥とかの匂いするし。さっぱりしてからがいいだろ?」
言われて、ぷ、と笑ってしまう。
「確かに、綺麗にしてから、くっつきたいよね……」
オレの頬に触れてる高瀬の手に触れて、頬から外す。
そのまま、なんとなく、離しがたくて、高瀬の指に触れる。
「……高瀬の手って、カッコいいよね」
「……そう?」
「……指、長くて。こういうとこさ」
関節のところ、さすさすと触れながら。
「男っぽいし。……でもなんか、すごく、綺麗だし」
手の平を親指でぷにぷに押しながら。
「なんか、ここらへんもかたいっていうか……なんか、理想的な手、って感じ……」
「……んー……」
高瀬が、苦笑した気配。
見上げると。
「……オレ、誘われてる?」
「え。いや、ちが、くて……」
高瀬がじっと見つめてくるので、焦りながらそう言って、また手を見つめた。
「ほんと、カッコいい手、だなあって……」
「今思ったの?」
「ううん。最初から思ってた」
「最初?」
「うん。研修の時。テキストとか、パソコンとかさ、指さして教えてくれてたでしょ」
「……ああ」
「あの時から、手もカッコイイーって、ずっと思ってた」
研修の時を思い出すと、なんか気持ちがめちゃくちゃときめくというか。
恋したての時だったからか、ものすごい、キラキラしてたというか。
今も引き続いてときめいてるけど。
なんて恥ずかしいことを考えていたら。ふと。
こんな綺麗な手が。
……オレの、いろんなとこ。……触って、くれちゃうんだよなぁ。
とか、一瞬浮かんで。
その次の瞬間には。
突然ヤバい位に、顔に血が上った。
「早くシャワー浴びといで? あんまり可愛いこと、言ってると、離してあげられなく……」
高瀬が呆れたように笑って言いながらオレを見て、オレが真っ赤になってるのに気づくと、え、と、めちゃくちゃびっくりした表情をした。
……そ、そりゃそうだよね、オレ、自分だって、顔熱すぎてびっくりしてるもん。
「え、織田?」
「……っなんでもない、シャワー、あびてく……っ」
捕まって、壁に、とん、と背をつかされる。
「……何で真っ赤??」
「…………っ……」
「どしたの?」
「……あの……恥ずかしいから、言いたく、ないような……」
そう言うけど、逆効果だったみたいで。
「んなこと言われたら、余計聞きたいし」
高瀬が、オレを壁に追い詰めたまま、自分のネクタイを緩めて、上からボタンを外した。
高瀬の、綺麗な、喉仏とか鎖骨とか。
カッコよくて、急に色っぽい雰囲気に早変わりで。
……だめだ、心臓が、パンクする……。やばいよー……。
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