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◇顔好き?*拓哉
乗った電車は混んでいたので、そんなに飲み会の話はせず、織田が見てるスマホで遊びに行きたいところを探しながら、時間を過ごした。
次々、あれこれ見せてきて、ここもここもとか、嬉しそうに言ってるのが、ほんと可愛く思える。
多分オレ、織田が何言ってても可愛いんだろうなあと、もはや過去のオレからは想像もつかないようなことを思いながら織田と話して、電車を降りた。
「混んでたねー」
やっとすっきりした空気だーと、大きく息を吸ってる。
「今週仕事忙しかったでしょ。まあオレのせいなんだけど」
苦笑いの織田に、まあ忙しかったけど、と、クスクス笑いながら頷くと。
「高瀬と話すのが全部仕事のことだった気がしてさ。ゆっくり話したいなーって思ってたんだけどね」
「ん」
「思いがけずな飲み会参加で、高瀬とはゆっくり話せなかったけど……楽しかったなぁ。……高瀬のバレンタインデーの話が面白かった」
「ああ……」
「廊下歩くたびに渡されるチョコが増えてく、とか」
「あいつら大げさだから」
苦笑いで言うと、織田は「きっと言ってたのが本当なんだと思うよ~」と笑う。エスカレーターで上に立ったオレが振り返ると、織田は、じー、と見上げてくる。
「だって、今もカッコイイけど、学生時代も絶対カッコよかったの想像つくし」
「話半分で聞いといた方がいいって。面白がってたしな、織田が良い反応するから」
「え、良い反応してた?」
「してたよ」
きょとんとしてるのが可愛く見えて、ふ、と笑むと。
ぴた、と動きも口も止めてから。
エスカレーターを降りると、オレの隣に並んで、またじっと見つめられる。
「高瀬、どうしたい? どこか寄って、飲みなおす?」
「ん? 飲み足りない?」
「んー……なんか、高瀬と二人でゆっくり飲みたいなーっていうのもあった、んだけど……」
「だけど?」
「……それは明日とかでいいかなあと、今は思う」
「じゃあ、今日は帰る?」
「うん。いい?」
「いいよ」
改札を出ながら頷いて、マンションに向かって歩き始めると。
「ほんと楽しかった。またいつか連れてって?」
「いいよ」
ふ、と笑ってしまいながら答えると、やったーと横で喜んでから。
「高瀬も、オレの友達に会いたい?」
「ん? ああ。そうだな、織田の学生時代の頃の話は聞いてみたい」
「あ、オレはそんなにすごい話は何もないと思うけど」
クスクス笑う織田に、んーでも、と付け加えた。
「織田みたいに、初対面から、あんなに打ち解けんのは無理だと思う」
「……んー? ……あ、そうだねぇ、多分ね」
「?」
、織田がオレを見つめてながら、可笑しそうに笑って。
「とりあえず、高瀬がカッコよすぎて、女子はしばらく釘付けになっちゃう気がする」
「……何だそれ」
「えーだってさぁ……」
楽しそうにオレを見つめてる表情に、苦笑いでそう言うと。
「絶対なると思うよ? 見たいなぁ、それ」
織田がわくわくした感じで言いながら、ふふ、と笑う。
「……織田って、ほんと、オレの顔好き?」
「え」
思わず聞くと、一瞬固まってから、かあ、と赤くなって。
「あ、うん……一目惚れ、だしね……」
なんだか、手を口に持っていって、もごもご言ってるのが、ほんと、可愛い。
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