230 / 235

◇会えて。

 楽しかったボートタイム終了。  最後、先に降りた高瀬が手を出してくれて、その手を取って、ボートから降りた。  そんなんで手を繋いだだけで、超幸せでご機嫌のオレ。  超良い日だなあなんて思う。 「織田、向こう、芝生広そう」 「あ、うんっ」  指さす高瀬の隣に並んで歩き始める。  たくさん人が歩いてる、週末の公園。子供連れが多いかな。恋人同士も多そうだし。たまに、仕事で通ってるだけかなーという人達もいるけど。  なんだか皆、楽しそう。  見上げると、樹の枝の隙間から、太陽の光。空は青くて、空気は爽やかで。  なんか最高。 「あの樹の下、行く?」 「うん!」  いい感じの大きな樹が見える。何組か、シートを敷いてるけど、場所は空いてる。樹のない芝生の真ん中ではバドミントンやキャッチボールをしてる人も居るけど、すごく広いので、全然ぶつかったりもしなそう。 「あとで、キャッチボールしようねっ」 「そうだな……って、キャッチボール、好き?」 「高瀬とできるのが嬉しい」 「……そっか」  ふ、と微笑んで、高瀬はオレと視線を合わせる。  ……多分ね。  これ聞こえる人が居たら、皆、何言ってんのって、思うかもしれないけど。  この公園に居る超たくさんの人の中で、高瀬が一番カッコいいと思う……。  あと優しいし。あと、頭も良いし。あと、仕事できるし。  高瀬が一番だと……。 「織田、そっち持って」 「あ、うん!」  ぼー、と考えてたオレは、さっき買ったシートを広げようとしてる高瀬に気づいて、慌ててそのシートの片方を手に取った。  大きく広げて、芝生の上に降ろす。 「風はないから押さえなくて平気かな?」 「座って、靴と荷物置けば大丈夫そうだな」  四隅、脱いだ靴と荷物で押さえて、真ん中に座ると、さっき買ったお弁当を出して、高瀬との真ん中に並べていく。 「高瀬、お茶どうぞ」 「ありがと」 「ん。あ、お箸ある?」 「ん……あぁ、ここ。はい」 「ありがと」  受け取って、ふ、と笑い合う。  こんな風にシートを敷いて、お弁当食べるなんてどれくらいぶりだっけ。  大学の時そうしたかなぁ。結構前かも。 「久しぶり、外でこういうの」 「織田は似合う」 「そう? まあ学生時代はしてたかも。高瀬は……あんましてない?」 「バーベキューとかはした記憶あるけど、シート敷いてとか……なんか記憶にないな」 「やってみて、どう?」  じー、と見つめていると、高瀬はぷっと笑う。 「楽しくないなんて言ったら、泣きそうな顔してるけど?」 「泣かないけどー。ちーん、て沈むかも」 「はは。――――楽しいに決まってんじゃん」  とってもいい笑顔で言われて、ぱああ、と心の中、花が咲くみたいな気分。 「良かった。じゃあ、いただきまーす!」 「いただきます」 「なんか取り皿欲しいね」 「これ、使う? 蓋」 「あ、使う」  おかずが入ってた丸い蓋を二人でもって、おかずを摘まんで食べてみる。 「なんかすっごく美味しく感じる……」 「な。外もいいな」 「ねー」  ゆっくり食べながら、青い空を見上げる。 「なんか、オレ、高瀬と会えてよかった」  しみじみ言ってしまって。  は。大げさ? と聞いたら、高瀬は少し考えて、ふ、と笑い出す。 「お弁当外で食べてるくらいで大げさ、だけど――――でも、ほんと。そうだな。オレもそう思う」   返してくれる言葉が、すごく嬉しい。   (2023/10/23)  

ともだちにシェアしよう!