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◇キャッチボール*圭

「織田、そんなにオレのモデルの写真見たい?」  不意に聞かれて、ぱっと高瀬を見つめる。 「うん。めちゃくちゃ見たい」  即答すると、高瀬は苦笑い。 「んー……じゃあ良さそうなの、絵奈にもらおうか」 「えっいいの?」 「たまに、言うからさ、織田」 「絵奈ちゃん持ってるの?」 「多分」 「やった、ありがと!」  高瀬は、とっても喜んでるオレをチラッと見て、クスクス笑う。 「そんな大した写真じゃないよ? 高校生のオレがカッコつけて撮ってるだけ」 「それが見たい。楽しみ」  ふふ、と笑うと、高瀬も、じゃあ一回見せるから、と笑う。 「絵奈ちゃん、彼氏と仲良しだよね、きっと」 「まあ長いこと友達だから、気は合うだろうし」 「いいね。めちゃくちゃ可愛いもんね、絵奈ちゃん」 「絵奈は織田のこと、可愛いって言ってたな」  高瀬がクスクス笑いながら、そんなことを言ってくる。 「うん、言われた」  あはは、と笑いながら頷く。 「織田は、兄弟、連絡とってる?」 「んー、用事がある時は連絡するけど……働きだしてからオレからの連絡は減ったかも。でも、高二の慎吾と中一の加奈からは、なんかどうでもいい写真が来るかなー」 「どうでもいいって?」 「美味しそうでちょっと珍しいお菓子の写真とかあと、雲の形が何に見える?とか」 「ああ。なんか、まだまだ可愛いな?」 「うん。結構幼いのかも、うちの子たち」 「そっか。……あ。俊さん、夕飯行かないと。連絡しないとだよな」 「ぁ、うん。そうだね」  頷いてから、高瀬をじっと見つめてしまう。 「あのさ高瀬……俊兄とご飯、とかさ」 「ん」 「しかも、こないだみたいに、友達としてじゃなくて、もうバレちゃってるわけでさ?」 「うん」 「……なんか、それでごはん行く、とか、ちょっと嫌というか……緊張するとかない?」  そう聞くと、高瀬は、んー、と少し考えてから。 「とりあえず、俊さんは、平気だと思う。これがさ、絶対反対だから話し合おうって言われてるなら、かなり緊張するけど」  高瀬が苦笑いで言う。 「う。それはオレも行きたくないかも」  笑いながらそう言って、なんとなく、 青くて綺麗な空を見上げた。 「少しずつ、でいいよね? ……とりあえず、一緒に居られたらいいな」  そう言って、高瀬を見ると、高瀬はオレを見つめ返した。 「そうだな」  二人とも、ふふ、と微笑んで、頷いて。  なんだかそれで、もう幸せなので、もういいかなとオレは思った。 「高瀬、キャッチボールしよ」 「ああ」  お弁当の箱を片付けてから、二人で立ち上がって、少し広いところに離れて立つ。   「いいよー高瀬―!」  そう言うと、ふんわりしたボールがまっすぐ飛んでくる。  何とかキャッチ。 「やったー取れた!」  たかがボール一つ取れただけで、めちゃくちゃ喜んでしまったと思った瞬間、クスクス笑いながら「ナイスキャッチ」と言ってくれる高瀬。  嬉しくなって、うん、と笑い返す。 「行くよー」 「んー」  グローブが無いし、野球ボールと言っても柔らかいボールだから、ゆるく投げあうだけ。子供の頃以来のキャッチボール。  でもなんかすごく楽しくて。  高瀬も楽しそうで。  二人で、結構長いことボールを投げ合っていた。  

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