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第二章 獣人の国と少年 (二十一-前)

ざっとタオルで拭いていたものの汗やら体液やらで二人とも外に出られる状態ではなかったため、もう一日ベッドでゴロゴロして休み、それから二人でシャワーを浴びた。 外が暗いのを確認して、今なら昼間より外に出てる人が少ないと予想してシーツやタオルの洗濯物をかき集めて大きいカゴに詰めて部屋を出ると、ココが部屋の前に控えていた。 「ヤヨイ様!」 「え!?ココ!?」 「お待ちしておりました。お身体は?もう動いて大丈夫なのですか?」 そう聞きながらスンスンと鼻を鳴らしている。 シャワーは浴びたが、まだ臭っているだろうかと夜宵は一歩後ろに下がった。 だがココの反応は夜宵が思っていたものとは違い、目をキラキラさせている。 「ヤヨイ様……シルヴァン様の匂いがします。シルヴァン様とようやくちゃんと番に……!おめでとうございます!」 どうやらココは港街にいた時からずっと気にかけていたようだ。 ――ちゃんと? 「お二方はとてもお似合いでしたし、あれだけシルヴァンさまにマーキングされていれば尚のこと、当然番になられるだろうとは思っておりました。なので以前ヤヨイ様が発情状態でお戻りになられてシルヴァン様とご一緒だった時はシルヴァン様も反応されておりましたので『ついに!』と思ったのですが、その時は何も無し。待っていたんです!僕は!」 熱く語り出したココは息継ぎもそこそこに早口でまくし立てる。 「ヤヨイ様、いえ、これからは奥様とお呼びするべきでしょうか!?」 「これまで通りがいいかな!」 夜宵が手に持つカゴに気付き、ココは代わろうとしたが夜宵が断ったため持ち手を半分ずつ持つことになった。 少し遅れて部屋を出てきたシルヴァンはカゴを半分こにする夜宵とココを目にして、 「子供は二人欲しい」 と呟いたのだが、それを聞いたココがまた目を輝かせてしまい、夜宵は恥ずかしさと照れで俯くしか出来なかった。 シルヴァンが夜宵につけた歯型は左側の首の付け根辺り、前からも後ろからも見える位置に付けられている。 思い切り歯を立てた為出血もしており、一時的にガーゼを当てて止血している状態だ。 シーツ類を石鹸水に漬けながら、まだ少し痛みの残る首に手を置くとココは「良かったですね」と笑顔を向けた。 不思議なことにこの痕は一生残るらしい。互いのフェロモンが血液を通して混ざることで組織の一部が変化し、噛んだ部分の皮膚に残るのだという。 ただ変化するのはその部分だけであり、根本的な体質が変わることはないため、複数のつがいを持つことも有り得るのだとシルヴァンは話した。 これまでシルヴァン以外特別に何かを感じることは無かったことから夜宵は警戒すらもしていなかったがどうやらシルヴァンの認識は違ったようで、夜宵は可愛いのだから直ぐに捕まって食べられそうだとか、獣人の番をもつヒト族は珍しいから物好きな獣人にも狙われそうだとか、番になってからの方が口うるさく説明されている。 洗濯物はシーツが五枚とバスタオルが十枚、ミニタオル四枚と大量であったため手分けして洗い、裏の庭に干しに出た。

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