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第1話
それは突然だった。
「お父さん!お母さん!」
目の前では自分の家が炎によって燃え盛り、視界は真っ赤になっていた。
煙の量もすさまじく、うまく酸素が吸えなくてクラクラする。
「君はこの家の子供かな?危険だから離れて!」
駆けつけた消防隊の人に前を塞がれ、小学生の非力な力ではどうすることもできない。
「助けてよ!まだ中にお父さんとお母さんがいるんだ!」
どんなに手を伸ばしても、その手はどこにも届かなかった。
結局、両親は遺体となって発見された。
焼け崩れた家の前に、現実を受け止められずに立っていることしかできなかった。涙も出し切り、どうすることもできず家を眺めている。
「これからどうしよう」
返事がくるはずもない言葉を呟いた。
親戚はどこも俺をひきとってはくれないだろう。本当に行き場がない。
そこに一人の男が声をかけてきた。
「はじめまして。北沢綾人くんだよね」
「…お兄さん、誰?」
黒い髪に白い肌。目は少し青みがかっているように思える。物腰柔らかそうだが、学ランをだらしなく着たその男の第一印象はあまり良くなかった。
「俺の名前はミツリ。今日から、俺と一緒に暮らさないか?」
それがミツリとの初めての出会い。
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