1 / 12

第1話

それは突然だった。 「お父さん!お母さん!」 目の前では自分の家が炎によって燃え盛り、視界は真っ赤になっていた。 煙の量もすさまじく、うまく酸素が吸えなくてクラクラする。 「君はこの家の子供かな?危険だから離れて!」 駆けつけた消防隊の人に前を塞がれ、小学生の非力な力ではどうすることもできない。 「助けてよ!まだ中にお父さんとお母さんがいるんだ!」 どんなに手を伸ばしても、その手はどこにも届かなかった。 結局、両親は遺体となって発見された。 焼け崩れた家の前に、現実を受け止められずに立っていることしかできなかった。涙も出し切り、どうすることもできず家を眺めている。 「これからどうしよう」 返事がくるはずもない言葉を呟いた。 親戚はどこも俺をひきとってはくれないだろう。本当に行き場がない。 そこに一人の男が声をかけてきた。 「はじめまして。北沢綾人くんだよね」 「…お兄さん、誰?」 黒い髪に白い肌。目は少し青みがかっているように思える。物腰柔らかそうだが、学ランをだらしなく着たその男の第一印象はあまり良くなかった。 「俺の名前はミツリ。今日から、俺と一緒に暮らさないか?」 それがミツリとの初めての出会い。

ともだちにシェアしよう!