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ひとつ

 「ごめん、御前に骨やんないことにしたよ。君の骨をしゃぶっていたいから」 ふふふと笑うカレ。 ああ、骨までカレにうばわれてしまうんだ。 でも、わるくないな。 「これで君は……永遠に俺のもの」 ぼくはカレにとらわれる……ずっと。 「ぼくはずっとあなたにいたぶられるんですね。あなただから、いいですよ」 そのかわり、ずっとそばにいてください。 「そう言われたら照れちゃうな。もう離してあげないから」 ぼくもあなたのそばにいますから。 「毎日何百回もキスをして、何千回も言ってあげるから……『大好きだよ』って」 ピンクのカレはまたふふふと笑う。 "許さないよ"か。 そうだよね。 でも、いいや。 あなただから。 「これで、あなたとひとつになれる」 ぼくもふふふと笑った。 あなたの中に溶けていって、ひとつになるんだ。  ガタン 「ではその命、やつがれがいただいてもよろしいでしょうか?」 きいたことがない声のさきを見ると、オレンジの髪の人がふえていた。 そして、おとなの笑いかたをしてちかづいてきた。 「あげます、もうどうにでもしてください」 にへらと笑うぼく。 「大丈夫でございますよ、悪いようにいたしません」 そうしずかに言ったその人は僕の額にごっつんこした。  「貴方様は夕馬でございます」 ぼくはまったくイミがわからなかった。 ゆう……ま? 「なに、それ」 「代わりにお名前を差し上げたのでございます」 その人はピンクのカレみたいな笑いかたをして、ぼくの頭をなでる。 「貴方様は今から人質でございます。朝日家の四男として生き、いづれかは御前家を潰すトップへとなるのでございます」 「朝日、家……?」 「はい。貴方様は罰として生きていただきます。貴方様が大事にしていた御前の名は今捨てました」 おほほと笑うその人。 罰として……生きる? 「貴方様は愛に溺れていただきます。縛られて苦しんでも、絶対に死なせませんので……しっかりと腹を括りなさいませ」 おぼれる……愛は水なのか。 それとも紐で括られることをいうのか。 わからないけど、くるしいんだ。 ぼくにはぴったりだ。 「くるしい、の?」 「それはもう。あなたが受けてきた暴力や地獄の罰よりずっと」 なんでしってるんだろう。 だれにもいったことがないのに。 さっき、会ったばかりなのに。  「あなたには、ぼくが"視えている"の?」 この人には、ぼくのすべてが……。 「ええ、手に取るように……はっきりと」 しずかに目を細めて、ぼくの髪にふれるその人。 「ここは楽園でございます。貴方様を傷つけるものなど、存在しないのでございます。ご安心くださいませ」 その人はまたぼくの額にごっつんこする。 「貴方様の居場所はここにございますよ」 すると、頭の中がふわふわとしてきて、気持ちよくなった。 「それな、ら……おねがいいたします」 それなら、いいや。 それだけでいいんだ。 でも、つかれちゃったから……やすませて。 ぼくはちからつきて、意識をはなしたんだ。

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