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トトとカカ

 「トト、カカ……我々で夕馬と名付けました。よろしいでございますか?」 キッチンに立つちゃいろい髪の人とテーブルで大きいかみを広げているくろい髪の人に声をかけるやひこ。 かいだんをぜんぶおりたぼくは2人がこっちを向いたのを見て、ペコリとあたまをさげた。 「ほぉ、礼儀正しい子やな。今日からここの子やから楽にしぃや?」 一重にみえるけど二重な目ととふっくらとしたくちびるを三日月のかたちにしてやさしい声で話しかけてくれるおとこの人はたぶんトト。 すこしすくるくるした髪型にさんかくの鼻だから、カッコいい。 トトにも、ぼくが"視えている"。 「ごめんなさい、お兄ちゃんたちうるさかったでしょ? 落ち着きたくなったらいつでも私たちのことを頼っていいからね」 おでこに大きいほくろ、二重でくりくりした目でぼくをやさしく見つめているのはカカなのだろう。 がさがさした声が低めなのに、ことばはおんなの人だからどっちかわからない。 カカにも、ぼくが"視えている"。 なぜ、この人たちにはぼくが"視えている"のだろうか。 やさしそうな2人でよかったけど、むねがモヤモヤしているから、よろしくお願いしますと言えなかったんだ。 「ゆーたん、座って待っといて」 ようちゃんが引いてくれたイスににチカラなくぼくはすわる。 「カカ、味どう?」 「ちょうどいいわ……はじめてなのに、良くできたわね」 カカにすぐにはしっていったようちゃんがほめられてあたまをなでられている。 「トト、本当に夕馬を弟にしてよろしいのでございますか?」 「ああ。その代わりちゃんとお前らでお世話するんやで」 立ち上がったトトより先にいったやひこが四角いものをもち、トトのコップへアカいものをながす。 トトはやさしい目でやひこを見て口のはじっこを上げる。 「もちろん! ちゃあんとみんなでかわいがるもん!!」 かわいい笑顔でそう答えたまひるをよろしくなと言ってほほえむトト。 ぼくには、まぶしすぎるとおもったんだ。  「ぼくは御前家の人間です!」 ぼくはいきおいよく立ち上がり、チカラのかぎりさけぶ。 「日本で一番の医者の六男……でも、出来損ないでした。兄たちみたいなサイノウもないぼくは下の下の下なんです。そんな、ぼく、を……あなたたちの、か、ぞくに、なん、て」 たくさん言いたいことがあるのに、のどにつまって出てこないからうつむいたぼく。 その代わりに目があつくなって、ポロポロとなみだがこぼれていく。 テーブルにしかれたしろいものをグシャと握っても、モヤモヤしたままなんだ。  「そんなん、関係ないやろ」 つめたく言ったのに、ぼくは引きよせられて顔を上げた。 「お前が今、存在している……それだけでええ」 まっすぐな目とおちついた声で僕に言ったトトはゴクゴクとコップのなかみをのむ。 なにげなく言ったけど、僕はそのことばにすくわれた。 見つけた、ぼくのいばしょ。 「あら、私と一緒じゃないの」 うしろにぬくもりを感じたとたんにぐらんぐらんとあたまをゆらされるぼく。 「ここは優劣も種族も関係ないのよ……性別も障害の有無もね」 ほほえんだ顔がはじめてであった時のようちゃんの笑顔によくにていて、おもわず見つめてしまう。 「もう、かわい〜い〜♪」 こんどはガシガシとあたまをなでられるから、シカイがぐるぐるしはじめた。 カッコいいトトと力が強いカカ……やっぱり面白い人たちだ。 この人たちなら、信じられる。

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