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平凡と朝ごはん
「賢いのは百樹 さんと陽太よね?」
カカはふふっと笑って、ぼくの目のまえにごはんとおはしをおく。
「俺はゆーたんを守るためならなんでもするよ……運命の人だから」
キゲンよく、今にも歌いそうなようちゃんの方を見ると、ニコッと笑ってくれた。
「ユーモアの富んでいるのは千佳 もやし夜彦もやんか」
やひこにしろいぬので口をふいてもらいながらトトはポツンと言う。
口のまわりにアカいものをつけ、ボーっとしているトトを見て、心の中で笑った。
「お手柔らかに宜しくお頼み申します」
やひこはおほほと笑い、また右の目をパチンとする。
「まひるは……?」
なんとなくきいてみたら、ふふんと鼻をならす音がきこえてきたからその方向を見たぼく。
「みてわかるやんか、へいぼんだよ?」
まひるは向かいのイスににすわり、ほっぺたに手をついてニヒッと笑っていた。
感情がはっきりしているし、ムキムキでよくうごくからだだからてっきり頭の回転がはやいんだとおもっていた。
平凡なんて、だれがおもうのだろうか。
「さっきからみえるみえないってようわからんこというてるけど、きょうからかぞくやからな? とにかくにいちゃんのいうことをちゃんときいてれば、まちがいないわ」
ニヒヒと笑うまひるの顔はあくまにしか見えなかった。
のみもののアカみが口のまわりについているのでよけいにコワい。
むちゃくちゃなことを言われたらどうしようと不安になっていたら、大丈夫とあのあまい声がきこえきた。
目のまえにおみそしるとやき魚がおかれる。
「マーにぃ。あんま意地悪なこと言うと……血、もらえなくなるよ」
より低い声で言ったようちゃんにまひるはハッとして、もうしわけなさそうな顔に変わる。
「ごめんちゃい! なんでもやるから、それだけはかんべんしてぇな」
小さい手を合わせ、あたまを2回下げるまひるにそんなにぼくの血が大切なんだとびっくりした。
「だ、大丈夫だから……吸いたい時は遠慮なく言って」
ぼくがそう言うと、まひるは花がさいたようにほほえんだ。
「ひる、よい弟で良かったでございますね」
「さすが、おれの息子やわ」
「鳶が鷹を生む……ね」
まひるの口もとをふくやひこのも
鼻がたかいトトのも
まんぞくそうなカカのも
うれしかったんだけど
「ちゃんと言えたね……偉い偉い」
天使のような笑みを浮かべながら、あたまをなでてくれるようちゃんがやっぱり一番だったんだ。
「さっ、冷めないうちに召し上がれ」
ようちゃんの手のさきを見て、ごはんがのぼくのものだとやっとリカイした。
ぼくが食べていたものは残り物だったから。
家族で食べているゴウカな食事をゆびをくわえて見ていただけだったんだ。
だから
しろいつぶが立っていて、つやつやと光るごはん
ミドリの平べったいものとしろい四角いものがはだいろのシルから顔を出しているおみそしる
ほそながいお皿に三角の形のキリミが2つ
クンクンすると、ほかほかのゆげとみそとバターの香り。
ああ、ユメみたいだ。
「陽太があなたのために作ったのよ」
ぼくのためになんて、うれしい。
それにさっき、はじめてときいたから、なみだがでそうになる。
「いただきます」
はしを左手で持っただけでバカにされていたのに、そのふんいきさえない。
まずはくろいおわんを持ってビクビクしながら口もとへはこぶ。
ずずず
まくてあたたかいシルの中にするりと平べったいものがすべりこんでくる。
のみこむととてもおいしい味が平べったいものから感じたから、目を大きくあけた。
「わかめ、好きなのね。とうふはどう?」
ぼくはカカのことばでミドリで平べったいものがわかめ、白くて四角いのがとうふだってはじめてしった。
次にわかめがついたとうふをつかみ、口へ入れる。
はふはふ
みそのすっぱさがとうふにしみていたから、すぐにごはんをガツガツと口へつめこむ。
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