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ほくろ
"いつまでもそばにいたい"
"運命をかんじてるよ"
はずかしいくらいまっすぐなことばをあまくて低い声でうたうようちゃん。
ヒョウジョウがないからクールなインショウをうけるのに、ぼくの手をにぎる手は強くてやわらかいんだ。
人生で一番おいしいごはんを食べたあと、ようちゃんとソトにでたぼく。
うすいあお色の空で太陽が見えなかったから、朝が早いんだとおもったんだ。
そうすると、ようちゃんもたいへんだし、髪をきる人にもメイワクだっておもっているんだけど。
でも、ようちゃんはキゲンよさそうにうたっているから、言えないし。
「そんなに見つめられたら、穴開いちゃうよ」
ふふっと笑う声が聞こえて、ぼくはハッとする。
口のはしを上げるようちゃんが目をほそめていたから、カッコよすぎでドキドキが止まらなくなった。
「なんでそんな蕩けた顔をしているの? 普通に見てるだけだよ?」
あまく低い声で言いながら手をすべらせるから、へんな気持ちも上がってくる。
「感度良すぎ……アレしなくてもいいね」
「アレって……?」
ぼくはわからなくて、あつい息をはくように言うと、ようちゃんは左手を左の目に当ててすぐにはなした。
すると、ちゃいろだった目がアカくなっていた。
それはぼくがイシキがなくなるまえに見たものといっしょだったんだ。
「悪魔の目……人間なら3秒見つめるだけで心臓発作で死に至らせるほどの最強最悪の代物さ」
そう言ってちゃいろい左の目といっしょにほそめるようちゃん。
でももし、どっちの目もアカくて3秒見つめられていたら、もう死んでるんだなぁってのんきに考えるぼく。
「全然怖くないよ、僕は」
ぼくはむしろアカい目が好きだから手をのばすと、ようちゃんはその手の甲にキスしてくれた。
「俺の方が殺されそう……ゆーたんのかわいさ、殺人級だから」
ヤバいよ、ゆーたん……なんていつの間にかちゃいろにもどった右の目をパチンとしてつぶやくから、ぼくはくすぐったくなる。
だれもいないときでよかったって、おもえたんだ。
「実は今、お昼なんだよ」
ぼくはびっくりして目を大きくひらくと、ようちゃんはむふっと笑う。
「ここはゆーたんがいた所から8時間の時差があるから、寝過ぎではないよ」
あとはここ、今の時期は極夜だし……というようちゃんのことばのイミがわからず、くびをかしげた。
「太陽が沈むから日中でも薄暗いっていう現象のこと。冬至っていう日の前後2ヶ月に起こるんだ」
これから勉強しようねとやさしく言ってくれるようちゃん。
ぼくのことをぜんぜんバカにしないんだ。
「でも気温はちょうどいいし、ルールもないし……自由な街なんだよ、文潟 は」
きれいなほほえみを見せてぼくを見るようちゃん。
きみのおかげでぼくはジユウだよ
こころからおもって、ぼくもほほえんだ。
そうしたら、ようちゃんのしろくてながい右手がぼくの左のほっぺたをつつむ。
「俺は、ゆーたんとならなんでも出来る……君の過去を忘れさせるのは朝飯前さ」
何回もほっぺたをなでると、左の目もとにクロいもの山が見えだした。
「出来たね、俺と同じもの……もっと好きになっちゃう」
ふふっとうれしそうに笑ったようちゃんはぼくの左のほっぺたにキスをする。
「これで朝日家の兄弟って誰にでもわかるようになったよ」
えくぼを見せて笑うようちゃんに言われて目もとにふれると、しっかりとしたほくろが付いていた。
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