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ヤキモチ
朝ごはんの後、それぞれ自分の好きなことを習いにいくんだ。
夜彦は小説、真昼は美術、ようちゃんは写真。
僕はまず知識を増やそうということで勉強することになった。
勉強と言っても、学校でいえば国語と社会。
あとは好きなことを好きなように学んでいこうって。
文潟で一番賢い青年が教えてくれるんだ。
その場所が夜彦と同じだから、一緒に向かっている。
新人気鋭の小説家の志朗(しろう)さんが兄、文潟一の物知りで勉強家の万生(まお)くんが弟の夕凪家がその場所。
万生くんは僕と同じ15歳で僕と同じ金髪なのに、僕よりずっと、ずうっとすごい人なんだ。
なんか急に不安になった。
僕はまだ出来損ないだから。
ようちゃんは付き合いたて、真昼はラブラブ、夜彦は失恋の歌を歌うからわかったんだ。
出会いがあれば、別れがあるって。
だから、誰でも付き合ったことも別れたこともあるよね?
「夜彦は今まで付き合った人って何人くらいなの?」
「付き合ったといえるかはわかりませんが、何人かはおりました」
なんせやつがれはこのような性格でございますからと言ってため息を吐く夜彦。
確かに、分かりにくい言葉を使うからね。
いい人なんだけどな。
「真昼は?」
「平凡でございますし、外では優しいと聞きますからそれなりにモテるかと存じます」
ある意味自分を持っているから、人をひき付けるのかもしれない。
「じゃあ、ようちゃんはもっとモテるよね」
だんだん声は小さくなるし、顔は下に向いていく僕。
でも、夜彦はおほほとうれしそうに笑っていた。
「それが一番聞きたかったのでございますね……そして一番聞きたくないと」
まだあんまり知らないから、もっと知りたいんだけど、知りたくないような気もする。
夜、ようちゃんと一緒に寝るんだけど、その時のアレのクセが気になるんだ。
気持ちいいか確認するとか
いやらしく撫でる手つきとか
最後のキメ台詞とか
どこでだれとしておぼえたのか、ちょっと気になるだけなんだ。
「ようちゃんが心から愛した人は貴方様が初めてでございます」
僕の頭の中を読んだかのようにするすると夜彦が話すから、僕は勢いよく顔を上げた。
「すべて声に出ておりましたので、正直に答えさせていただきました」
僕はあわてて口を押さえたけど、だだもれでございましたと穏やかに笑われる。
「あの方は他人との間に壁を作るのですが、綺麗なお顔なので寄ってくる虫は多いのです。ただ逃げるのも早くてまた壁が厚くなるの繰り返しだったのでございます」
ポツリポツリと言いづらそうにいうのを聞いて、僕は不謹慎だけど、ちょっと嬉しかった。
でも、胸のモヤモヤは晴れないんだ。
「ヤキモチでございますね……かわいいですよ」
おほほと笑う夜彦は僕の髪を優しく撫でる。
気持ちいい……でも、ほしいのはこの手じゃないんだ。
「まぁ、イヤでも分かるようになります。貴方様がどれだけようちゃんに愛されているのかを」
いきなり耳元でゆっくりとささやかれたから、僕はゾクゾクが止まらなかったんだ。
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