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それだけさ

 今日の朝ごはんはオムライス。 赤いケチャップライスに乗っているふわふわの黄色いだ円形の卵をナイフで割ると、優しく包み込んでいく。 そして、食べるのは1人だけではない。 みんなも同じように開いてカンセイを上げるから、うれしくなるんだ。 吸血鬼……まぁ、吸血鬼のトトと人間のカカから生まれたからダンピールっていうらしいんだけど、ほぼ吸血鬼の生活だから、一応吸血鬼とするね。 吸血鬼は主に人間の血を栄養とするみたいなんだ。 だから、食べなくても生きていけるんだけど、僕に合わせて朝ごはんは食べてくれることになった。 でも、食べるようになって良いことがあるみたいなんだ。 「陽太、料理上手くなったわね。私のお弁当も頼んじゃおうかしら」 ようちゃんの腕も上がってきているし。 「こんなに美味しいなんてな……千佳1人で食べさせていて悪かったわ」 カカも少しはさびしくなくなったし 「そうそう、零屋(ただや)さんで食材を買うようになったのが嬉しいみたいで、トマトジュースをおまけにつけてくれるようになったんだよね」 零屋さんは賞味期限切れなどの日本では捨ててしまうものを仕入れて売ってくれるところなんだって。 「ゆうちょもいってみぃや……しゃかいべんきょうになるで」 トマトソースを器用にスプーンですくい、卵へかけながら真昼はニヤッと笑う。 「お金ではないもので売買する姿は見たことないでございましょう。どうなることやら」 見物でございますねと含み笑いをする夜彦に僕はうんと不安そうに言ったんだ。 瞳耳では、僕のお祝いだと言ってお金を払わなかったもん。 「大丈夫、きっと気に入ると思うよ」 僕はこの言葉を聞くと、とても安心するんだ。 だって、この言葉が聞こえてきた隣をみると、優しく微笑むようちゃんがいるから。 「優しい気持ちをもらったら、感謝の気持ちを返す……それだけさ」 本当にあなたは……でも、好きだよ。    そろそろ、オーロラが見れるようになるんだって。 僕の今わかる知識では虹のようなもので色鮮やかなきれいなものだってことぐらいかな。 それをトトとカカがカンソクするから、4人で観に来ないかってトトから言われた。 そして、夕馬は初めてなんだから、お兄ちゃんたちにおめかししてもらいなさいってカカから言われた。 今のところでは半月後だって言われたら楽しみになってきた僕はつないだ手をぶんぶん振るんだ。 でも、その手の相手が口ずさむのは失恋の歌。 "私よりもっと孤独な誰かが あなたの帰り待ってるわ" 暗い声色なのに軽く伸びる歌声の先を見ると、兄弟で一番高い頬をテカテカさせた夜彦の横顔が見えた。

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