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幸せ
次はナンバー2の真昼。
いつもは表情豊かなのに、この時だけ真顔になるんだ。
両手を構えてうつむく真昼。
「なんか拳法みたいになっておりますね」
夜彦はさっきの仕返しのように言う。
ようちゃんはご満悦のように高笑いをする。
「シャー!!」
勢いよく顔を上げて僕を睨み、両手を激しく上下に動かすから、僕はビクッとした。
シャー、シャーと吠えながら爪を立てる姿は怒っているのだと、見たことのない僕でもわかった。
気がすんだのか、フッと笑った真昼は右手を丸めておでこを拭いた。
「にゃあん、にゃ♪」
高くて柔らかい声を出してかわいい感じを演出したから、思わぬギャップにキュンとしたんだ。
そして、お待ちかねのようちゃん。
憑依型みたいで、結構リアルだと評判なんだ。
ようちゃんは深呼吸をした後、人懐っこく微笑む。
「んーんー、んにぁ、んにゃにゃ♪」
丸めた手を頬にくっつけて、甲高い声で小さく鳴いている。
「んにゃあ、ごろごろにゃあ♪」
甘えたように叫んで僕に抱きついてきた。
僕は抗うことなく、背中に腕を回した。
ペロペロと僕の耳から頬、そして首筋を舐める。
そのついでのようにチリッと噛んで、また痕をつけたんだ。
見事な猫のモノマネに圧倒された僕は恥ずかしくなる。
「俺たちのを参考にしたら出来るから」
「とりあえずやってみいや」
「どんなものでも受け入れますよ」
3人が優しく微笑むから、僕は意を決して両手を丸めた。
恥ずかしい、恥ずかしい……ニャ、にゃ!
「にゃ……にゃあ?」
左手が上になるように構えて、撫でるような甘い声を出してみた。
3秒固まった後、かわいいと言われて3人に抱きつかれた。
3人に甘やかされるのが僕の日常なんだ。
今日は17時に帰ってきたカカのお手製ミートソースパスタが晩ご飯。
曇りの日など観測不能な時は早く帰ってくるから、その時はトマトが際立つナポリタンやミートソースパスタを作ってくれる。
それに、みんなで晩ご飯を食べるからとても楽しみなんだ。
ナポリタンは2回食べたけど、ミートソースパスタは初めて。
トマトソースが濃い上に、みじん切りされたナスや玉ねぎ、ピーマンの食感がいい。
「懐かしい……あのバーと同じ味がするわ」
口中にトマトソースを付けながらトトが言う。
「当たり前でしょ、あそこのレシピを真似てやったんだから」
カカはふふんと鼻を鳴らしていた。
バー……今日聞いてきた話に出ていたと思い出す僕。
「トト、カカ……その話、詳しく聞かせて?」
辛い話かもしれないと思いながら勇気を出して言ってみる。
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