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全部、熱のせいだ⑤

 すると課長は何故か頭を抱え、大きな溜め息をひとつ、吐き出した。 「なるほど、確かにな。  ......お前なら、好きでもない相手に無理矢理ヤられるくらいなら、自分の舌を噛み切るんじゃなくイチモツ食い千切る方がしっくり来るわ」   「......なんですか?それ。  当たり前でしょ。  なんで僕が犯されそうだからって、自殺なんていう真似をしなきゃいけないんですか。  って言うか......お前が、死ね!!」  イライラがMAXに達し、またしても口調が荒くなる。  でも彼はあの日から一度も見せることの無かった感じの悪い笑みを浮かべ、言ったのだ。 「自分の舌を噛み切ってでも、お前なら抵抗して然るべきなのに、なんで途中からおとなしくされるがままになったのか、ずっと疑問だったけど。  ごめんな、久米君。  ......お前俺の事が、めっちゃ好きだったんだな」  なんで、そうなるんだよ?  確かに、その通りだけど。  ......マジで今すぐ、ぶん殴りてぇ!! 「おーい、久米くーん?  ......もしかして、図星?」  羞恥と怒りで震える僕の目の前でプラプラと揺れる、課長の大きく男らしい手のひら。   「......だとしたら、何なんすか」  いつもなら、絶対に口にしなかったであろう返答。  熱のせいで感情のコントロールが利かなくなっているのを感じながらも、やっぱり止める事が出来ない。  こんな事を言ったら、この男を調子付かせるだけだというのに。 「......マジか」  彼は口元に手をやり、ちょっとうつむいて、それからこれまで見たことがないくらい嬉しそうに笑った。

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