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全部、熱のせいだ⑦

 久しぶりに訪れる、課長の部屋。  相変わらず綺麗に整理整頓され、余計なモノなんてほとんど置かれていないそこに足を踏み入れると、嫌でもあの夜の事が脳内に甦って来た。  腕を掴まれ、そのままベッドに組み敷かれて、優しく髪に触れられながら、キスを交わした。 「どうしたの?今日。  ......ホント素直過ぎて、ちょっと気持ち悪い」  クククと笑う、彼の顔。  職場で見せる上司の顔とはまるで異なる、久しぶりに見る素の彼の表情に、心音が跳ね上がる。 「別に、いいじゃないですか。  それより......ね、課長」  彼の着ていたシャツに手を伸ばし、脱がせた。  一瞬また彼は目を細め、僕の様子を窺うような顔をしたけれど、すぐにクスリと笑って抱き寄せてくれた。  その色っぽい表情に、こんな筋肉質な大男、まるで好みじゃ無かったはずなのに、ドキドキする。 「って、お前。  ......やっぱ熱あるじゃん、言えよ馬鹿!」  慌てた様子で、体を離された。  でももう僕の体には完全に、火がついてしまっていて。  ......我慢出来ずに、今度は僕の方から彼を押し倒した。 「関係ない。  課長......体熱い、助けて」  泣きそうになりながら、彼の首筋にキスを落とした。 「はぁ......、ったく。  朝から様子がどうもおかしいと、思ってたんだよ。  ......一回だけ手で抜いてやるから、それで我慢しろ」  ズッ、と下着ごと、ずり下ろされて。  ......剥き出しにされた、下半身。  恥ずかしいとか、悔しいとか、そういった感情も熱のせいで吹き飛ばされてしまっていたから素直に足を開き、彼に身を委ねた。

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